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「ヘリコバクター・ピロリ菌」2DタイプCタイプBタイプAタイプ1年に1回2~3年に1回5年に1回 検査のはなし vol.13専門医が解説する13+8http://www.tms-mc.com/webclinic/index.html【参考文献】 井上和彦 胃がん対策のあるべき姿 日本がん検診・診断学会誌 26(2): 131-138, 2019.●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。正常な胃にピロリ菌が感染している状態です。胃内視鏡検査をおすすめします。胃がんにかかりにくい状態です。検査間隔のめやす胃が少し萎縮している状態です。胃内視鏡検査をおすすめします。胃粘膜の萎縮が進み、ピロリ菌が胃に棲息できなくなっている状態です。胃内視鏡検査をおすすめします。日本臨床検査専門医会五十嵐 岳ヘリコバクター・ピロリ抗体検査正常な胃です2つの血液検査ペプシノゲン検査ほぼ0人胃がん発生リスクがやや高いです1,000人に1人400人に1人ペプシノゲン検査陰性陽性胃がん発生リスクが胃がんリスクをABCDに分類高いです要内視鏡検査ヘリコバクター・ピロリ抗体検査陰性AタイプDタイプ陽性BタイプCタイプ胃がん発生リスクがかなり高いです80人に1人2023.03 – LABO ■ヘリコバクター・ピロリ菌に感染するとどうなるの?2018年度厚生労働省による悪性新生物部位別死亡率の男性第2位は胃がん。ヘリコバクター・ピロリ菌はその原因と考えられている菌です。ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出すことにより胃酸を中和しながら胃内に感染し、さまざまな分解酵素を作り出します。それらの酵素は胃を保護している粘液層を破壊、粘膜障害と炎症を起こしてしまいます。その結果、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんの原因となるわけです。ピロリ菌に感染しているかどうかを 調べる方法は?最も簡単に評価することができるのが、血液採取によるペプシノゲン法です。ペプシノゲンは胃で作られる蛋白質分解酵素ペプシンのもとになる物質ですが、胃底腺領域から分泌されるPGⅠ、幽門腺、噴門腺、ブルンネル腺から分泌されるPGⅡがあります。ピロリ菌感染により胃粘膜萎縮が進行すると胃底腺も縮小してくるので、胃底腺を主としているPGⅠ値は低下、それに伴ってPGⅠ/Ⅱ比も低下してきます。これをペプシノゲン法陽性とし、胃がん前段階である萎縮性胃炎の可能性を探るわけです。このペプシノゲン法に加え、ピロリ菌の抗体を検査することで、胃がんリスクの評価を行っているのが市検診で行われているABC検診です。ちなみにABC検診は採血のみで行える検査ですよ。ABC検診への対応は?ABC検診はペプシノゲン法の陽性陰性、ピロリ菌抗体の陽性陰性にてABCDのカテゴリーに分けられます(左下図参照)。A群はペプシノゲン法、ピロリ菌抗体ともに陰性=正常な胃と思われますが、今後も発がんしないというわけではありませんので、定期的な検査が推奨されます。では、B~D群のほうはどうしたらよいのでしょうか? 答えは上部消化管内視鏡を受けること。内視鏡では胃粘膜の状態を確認でき、胃の組織を少々いただくことにより、ピロリ菌感染の再確認が可能です。確認し、もし感染していたら除菌を行いましょう。除菌は胃薬と抗生物質2種類を1週間内服するだけで、約80%の方の除菌が可能です。除菌薬内服中の注意点としては、抗生剤による下痢、まれに味覚障害が起こりえます。また、除菌薬内服中の煙草や飲酒は除菌率を下げてしまうので、控えるようにしてくださいね!「先日受診した市検診にて、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染疑いがあるので、病院を受診するように」との結果だったのですが……。何も症状がないのに、わざわざ受診をする必要性はあるのですか?病気の検査24

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