Labo_531
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図2 アルツハイマー型認知症の病態進行はないが、MCIの段階で気づき、予防対策をしっかりと行えば、正常な認知機能に回復する可能性があること、回復しなかったとしてもMCIの状態でとどまることができれば、大きな支障なく自立した生活ができるMCIのスクリーニング検査です。MCIのリスクを統計学的に判定しこと、ここがMCIと認知症の大きな違いです。現在、全国約2000の医療機関で採用されている「MCIスクリーニング検査プラス」は、筑波大学と株式会社MCBIの協同開発によるこの検査は、血液中の特定のたんぱく質の量を調べることにより、アルツハイマー型認知症の前段階であるようというものです。アルツハイマー型認知症発症の原因のひとつといわれているアミロイドβは、加齢や生活習慣の乱れにより脳内に蓄積されていきます。アミロイドβとは、脳内でつくられるたんぱく質の一種で、健康な人の脳にも存在する物質です。しかし、私たちの身体には脳内からアミロイドβを排除する仕組みが備わっていて、通常は脳内のゴミとして短期間で分解、排出されます。ところが、生活習慣病などにより血管の老化が進み、血管の弾力性が失われると、血管の状態が悪化したり、排除機能などが低下したりして、アミロイドβが脳内に蓄積するといわれています。その結果、認知機能の低下を招き、アルツハイマー型認知症発症につながると考えられています(図2)。この検査では、アルツハイマー型認知症の進行に関わる4種類のたんぱく質に注目し、それぞれの血中量を測定することでMCIのリスクを評価します。●栄養系たんぱく質⬇身体の栄養状態を反映するたんぱく質の量を測定。これらは脳のなかのアミロイドβを脳内から排除したり、毒性を防御する機能があります。●脂質代謝系たんぱく質⬇脂質代謝の状態を反映するたんぱく質の量を測定。脳の健康を保つものや、アミロイドβと結合して血中へ排出する機能があります。●炎症・免疫系たんぱく質⬇身体の炎症状態を反映するたんぱく質と免疫力の主役となるたんぱく質の量を測定。脳内のアミロイドβを排出する役割を担う細胞や免疫機能を担う細胞とともに脳内を健康に保つ機能があります。「MCIスクリーニング検査プラス」●凝固線溶系たんぱく質⬇脳のなかの血管損傷を防いだり固まった血液を溶かす働きに関わるたんぱく質の量を測定。脳のなかの血液脳関門の血管損傷部位を修復したり、血液を固まりにくくし、血管のつまりを解消する働きがあります。検査の手順は、5㎖の採血だけ。これを医療機関が提携の検査センターに送り、約2〜3週間で医療機関宛てに検査結果報告書が届きます。MCIのリスクは、A〜Dの4段階に評価され、リスクの高低、またはすでにMCIの可能性が高いか低いかがわかります。この検査はスクリーニング検査ですから、判定結果で診断が確定するものではありません。自分の状況に合わせて生活習慣を見直すきっかけにし、将来MCIや認知症に進行しないように行動変容をしていくことが大切です。自由診療のため、検査費用は医療機関によって異なります。検査を実施している全国の医療機関は、のホームページで検索できます。血液検査でMCIリスクをスクリーニング認知症リスクにかかわる4種類のたんぱく質生活習慣の見直しなど検査を行動変容のきっかけに神経細胞赤血球アミロイドβ神経毒性物質栄養系たんぱく質脂質代謝系たんぱく質炎症・免疫系たんぱく質凝固線溶系たんぱく質MCI アミロイドβ★参考資料 ・『認知症疾患診療ガイドライン2017』日本神経学会、『 日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』 厚生労働省、  MCIスクリーニング検査プラスホームページ(株式会社MCBI) ・『もしかして認知症?軽度認知障害ならまだ引き返せる』浦上克哉著・ (PHP新書)13■ LABO – 2023.04健常アルツハイマー型認知症Medical Trendメディカル・トレンド

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