Labo_531
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子育て世代での増加の要因は子どもの水ぼうそうの減少帯状疱疹と診断が確定したら、VZウイルスの増殖を抑えるための抗ウイルス薬と鎮痛薬を用いた薬物療法を開始します。発症直後から抗ウイルス薬を服用すれば、10日程度で発疹と痛みが治まります。抗ウイルス薬がなかった時代には治癒までに20日程度かかっていたので、気になる症状があれば、早めに皮膚科を受診することが大切です。発疹と痛みが治ったのち、1~2カ月間、痛みが現れなければ安心です。一方、皮膚の状態が改善しても痛みが続く場合や、痛みが再発した場合は、帯状疱疹後神経痛に移行した可能性があります。その場合は通院治療を続けたり、再受診したりして、痛みをやわらげる治療を行います。治療法については、7ページを参照してください。帯状疱疹は通常、通院治療ですが、症状が重い場合は入院治療が必要になります。発疹が全身に広がっている、痛みが非常に激しい、水ぶくれが大きくただれて黒ずんでいるなどの場合は、帯状疱疹後神経痛に移行する可能性が高いので、入院して抗ウイルス薬を点滴投与し、原因ウイルスを抑え込みます。わが国では、近年、20~40代の若い世代に帯状疱疹が急増しています。その原因としては、2014年、小児(生後12カ月から36カ月まで)を対象に水痘ワクチンの定期接種が始まったことが影響しているとされています。前述のとおり、日本の成人の約9割は体内にVZウイルスが潜伏しているとされていますが、ウイルスの活動を抑え込む免疫力は時間とともに低下していきます。しかし、水ぼうそうにかかった子どもの世話をして新たにVZウイルスが体内に入り込むと、低下した免疫力が再び強化されます。これを「ブースター効果」といいます。水ぼうそうが増えれば、感染したことのある人はブースター効果が得られやすくなり、帯状疱疹を発症しにくくなります。逆に、水ぼうそうが減少すれば、ブースター効果が得られなくなり、帯状疱疹が増えてしまうのです。また、かつての日本では若い子育て世代が両親や祖父母といっしょに暮らし、子どもが水ぼうそうにかかるたびに大人はブースター効果が得られたのですが、現代社会では核家族化、少子化が進み、こうした機会が減っています。さらに、昨年、米国で発表されたデータでは、50歳以上の約200万人を調べた結果、コロナに感染したことのある人はそうでない人に比べ、帯状疱疹になる割合が15%ほど高く、コロナで重症になった人では21%増えていました。また、コロナ禍でストレスが増えたことにより、VZウイルスが再活性化するおそれがあるともいわれています。こうした理由で、今後も帯状疱疹にかかる人が増えると懸念されています。帯状疱疹を予防する最も有効な方法は、予防ワクチンの接種です。詳しくは7ページを参照してください。また、一度、帯状疱疹なったから再発しないという保証はありません。高齢者や免疫力が著しく低下した人では再発する場合もありますし、まれに命にかかわる合併症を招く病気でもあることから、軽く考えないことが大切です。◆帯状疱疹の早期診断に役立つ検査 帯状疱疹の診断の際、典型的なケースでは症状を観察するだけで診断が可能ですが、単純ヘルペスやほかの皮膚疾患との区別がむずかしいケースも少なくありません。 帯状疱疹の検査法にはTzanck試験、蛍光抗体法、血清抗体測定、PCR法がありますが、実施できる施設や保険適用などの課題がありました。 2018年に登場した「水痘・帯状疱疹ウイルス抗原検査キット(商品名:デルマクイック®VZV)」は、帯状疱疹の早期の段階で、医療機関において、特別な機器を用いることなく、迅速かつ簡便に行うことができる検査法です。 水ぶくれの内容物またはびらんや潰瘍のぬぐい液を検体とし、抗原検査薬に3滴たらしたのち、5~10分で判定可能になります。既存の検査法のうちPCR法は感度が高く、有用性が高い検査ですが、この抗原検査キットの性能はPCR法に遜色がないことが示されています(全体一致率96.2%の精度)。2023.04 – LABO ■6参考:マルホ(株)ホームページ、ニュースリリース図表5 迅速診断キットの特徴

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