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「加圧トレーニング」は、腕・脚の根元を専用のベルトで適度な圧力で締めて行う、とてもユニークな筋トレ法です。株式会社サトウスポーツプラザ代表の佐藤義昭氏が発明し、1993年に特許出願がされています。2013年にその特許が切れた関係で、近年は「血流制限トレーニング」や「BFR(血流制限の英語表現略)」という呼び方で、多くの企業からベルトが販売されています。特許期限が切れたことでベルトの販売価格が各段に安価になりました。腕と脚で10万円以上していたものが、商品によっては1/10以下と、かなりお求めやすくなりました。それだけ身近なトレーニング法になったといえます。加圧トレーニングは、専用のベル    いトで四肢の根元を締めることで血流が制限され、筋肉内が低酸素状態になります。それにより無酸素性のエネルギー反応で生じる乳酸などの代謝物が蓄積し、筋内の代謝環境が過酷になります。このような筋内環境の変化が、筋肉を発達させる有効な刺激になっていると考えられています。筋肉内に水分を多量に引き込みます。筋肉が水膨れで一時的に膨れ上がって、一回り大きくなります。いわゆるパンプアップという現象ですが、加圧トレーニングはかなり強いパンプアップを実感できます。の顕著な筋肥大効果を示しています。効果的な筋力トレーニングの1つとして、研究者の間では世界的に認められている方法です。学術的なお墨付きがあるわけです。的ですが、加圧トレーニングは20-きな特徴です。低負荷で高い効果が得られることは大きなメリットです。代謝物の蓄積は浸透圧の関係で、数多くの研究が加圧トレーニング通常の筋トレは、最大筋力の70-Journal of applied physiology とケガのリスクを抑えて実施することができます。関節や筋・腱が脆弱になっている中・高齢者向けの、安全で効果的な方法として期待されています。また、トレーニングにおける力学的負荷が小さいため、筋損傷の程度が小さく、回復時間を短縮できて高頻度のトレーニングが可能となると考えられます。東京大学の研究グループは、1日2回という高頻度の加圧トレーニングにより、短期間で劇的な筋肥大効果(3週間で約6%の筋肥大)が観察されたことを報告しました。この報告は、学術的にもかなりセンセーショナルで、掲載されたう学術誌の2006年の年間優秀論文として表彰されました。加圧トレーニングでは、適切な締めつけの圧力が大事なポイントとなります。加圧トレーニングの標準プロトコールでは、ベルト部分の圧力を、静脈圧以上にして血流を制限しつつ、同時に過度の虚血とならないように動脈圧以下に設定しています。見よう見まねでは適切な圧力がわかりませんので、最初のうちは専用のジムで指導を受けたほうがいいでしょう。 脚を締めるユニークな筋トレ法メメカニズムと効果低低負大荷きでな高特い徴効果がベベル静ト脈の圧適以切上な動圧脈は圧以下第6回 ベルトで腕・脚を締める加圧トレーニング腕腕・2023.06 – LABO ■1050%程度の軽めの負荷で行うのが大80%程度の負荷で行われるのが一般腕・脚の根元を専用のベルトで適度な圧力で締めて行う「加圧トレーニング」谷本道哉(たにもと・みちや)運動生理学者、筋生理学者1972年、静岡県静岡市生まれ。大阪大学工学部卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。順天堂大学スポーツ健康科学部専任准教授。『みんなで筋肉体操』(NHK)の出演者として知られる。著書に『筋トレまるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『スポーツ科学の教科書――強くなる・うまくなる近道』(岩波書店)、『スポーツがうまくなる!! 身体の使い方、鍛え方』(マイナビ)など多数。令和医新

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