Labo_533
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負けた、あるいは順位が大事なのではなくて、チャレンジすることが大事。柔道でも運動会の徒競走でも、子どもたちは普段から一緒に練習をしていれば、自分の実力というのはおおよそわかっているもの。そんな中でたとえ負けるのがわかっていても、その場に臨むという勇気を褒め称えてあげるべきだと思います。そして正々堂々、精一杯戦った。スポーツの素晴らしさは、それが体験できることにあります。だからこそ、それを上手に活用するのが指導者の務めであり、親の務め。ところが、試合になると技術や結果ばかりに思考が偏ってしまう。「可愛い子にはスポーツをさせよ」という言葉をもっと自信をもって言えるようになるためにも、私たちはその本質についてあらためてしっかりと理解する必要があると思っています。からこそ、むしろ強くなるほどに角がとれて円くなっていったのでしょうね。山口 もちろんそれもあると思いますが、やはり原点は習い事という感覚で取り組んでいたからだと思います。柔道は目的達成型の競技であり、言い換えれば、究極の技を磨き上げることを求めていく武道的特性を内包したスポーツ。角がとれるということは、つまりそういうことで、ただ単に力でねじ伏せるというのではないと思います。「柔よく剛を制す」と言われるのも、柔道には実はそういった魅力があるからではないでしょうか。歪んだ円や四角形を満月のようなまん丸に、そして大きく整え成長させていく。指導者の皆さんには、そういったところを目の付け所に指導に当たっていただくと、柔道がもっと楽しく、さらに魅力的なものになるのではないかと思います。お話をうかがっていると、指導者の役7―割がいかに重要であるか、再認識できました。山口 〝座学力〟と言えばいいのでしょうか。言葉の力によって正しい方向に導くという手法が今後はより求められるような気がします。そのためには、指導者自身も学び続ける努力をしなければいけないと思います。一方で、スポーツのいいところは、特に子どもたちを対象とした指導では、もう手離れせざるを得ないという意味での貴重な体験ができることです。試合に負けそうだからといって、親や指導者が加勢するわけにはいきません。子どもたち自身がやりきるしかなく、そして実際に懸命にやりきっています。「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、スポーツだって同じ。ただし、勝った■ LABO – 2023.06スポーツのいいところは、だれも加勢できないことです!「わが家の大切な同居犬です。名前はリッキー。メスの5歳です!」日本オリンピック委員会在外研修制度で1年間イギリスへ留学。指導者・研究者としての経験を積んだ(1993年)諸外国からの留学生も多く在籍していた    (第1、2回:50kg級、第3~10回:52kg級)世界柔道選手権準優勝1978~1987年 全日本柔道女子体重別選手権10連覇 1980年、1982年、1986年、1987年 1981年 環太平洋柔道選手権大会優勝1984年 第3回世界柔道選手権優勝(日本女子として初)1985年 第3回福岡国際大会優勝(日本人として初)1986年 第4回福岡国際大会優勝1988年 ソウル・オリンピック銅メダルKaori Yamaguchi’s DATA

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