日本衛生検査所協会の臨床検査精度管理調査は、わが国の代表的な検査所間比較プログラムの1つとされています。同調査は1974年から始まり、今回で48回目となります。令和4年度第48回調査への参加は256施設でした。今回の「臨床検査精度管理調査結果検討会」も、Zoomを使用して、日本衛生検査所協会会議室等と参加者をウェブでつないで開催されました。委員長の高木康先生は、「かつては、精度管理は分析と検査値の確認だけでしたが、現在は医師の検査依頼から報告まで含めた精度保証となっています。臨床検査の精度管理は、測定結果に対する信頼性、測定における正確さと精密さです。精度管理で最も重要なことは、施設間誤差の解消であり、測定法の相違による検査値誤差を認識し、同じ検査を行う場合に病診連携、病病連携において重複検査が削減され、患者の肉体、精神、経済的負担を軽減することができます。また共用基準範囲は、外部精度管理調査に参加して他の施設と互換性のある数値を測定できる施設しか使用できません。日衛協精度管理調査の特徴は、臨床化学ではアルブミンと血清鉄は低値の患者プール血清で調査していること、血液検査では健常人生血液を用いて調査を実施していること等です。今後も我々は精度管理に関する努力を怠らず、信頼のある臨床検査結果を国民に届けるようにしましょう」との総評を述べられました。また、山田俊幸先生(免疫血清学的検査・自治医科大学)からはTSHのハーモナイゼーション対応はほぼなされていること、三ツ橋雄之先生(血液学的検査・慶應義塾大学)からは血球計数や血球形態検査の成績は良好であったこと、菅野治重先生(微生物学的検査/新型コロナウイルス遺伝子検査・鹿島病院感染症診療支援センター)からはベロ毒素検査を実施していない施設は検査法を見直すよう要請がされるとともに、武漢株と令和4年度(第48回)の「臨床検査精度管理調査結果検討会」が、6月6日にZoomを使用した完全ウェブ方式で行われました。精度管理委員会が中心となり毎年行われている精度管理調査は、日衛協が積極的に取り組んでいる重要な事業の1つです。48回目を迎えた今年の調査結果検討会の模様をレポートします。オミクロン株で検出感度に差は認められず現在の機器・試薬は十分対応できると判断した、等の各調査結果の講評が行われました。完全ウェブ方式で開催された48回目の臨床検査精度管理調査結果検討会は、精度の維持・向上に継続して努めることを改めて確認し、盛会のうちに終了しました。「免疫血清学のトピックス~甲状腺検査を中心に~」をテーマに特別講演を開催国民医療を支える存在であるために講演者は、一般社団法人日本甲状腺学会理事長の菱沼昭先生。「甲状腺の疾患は、甲状腺中毒症(機能亢進)では代表例としてバセドウ病、甲状腺機能低下症では代表例として橋本病(慢性甲状腺炎)があります。ともに自己抗体の一連の病気であり、橋本病は一般人口の10から15%に抗体が出ますが、機能低下になるのはそのうち数%になります。また甲状腺は原則的に女性の病気で、男女比は1対5になります。原則として、1つの検体には1つの検査結果しかありませんが、キットごとに結果が異なることもあり、標準化が行われています。標準化されていない問題点は、不適切な診断・治療が行われる可能性があること、医療機関を変えることで違う値になること、研究成果の比較ができずガイドラインが不正確であることです。そして現状での免疫血清学の問題点は、方法間CVが大きいことです。日本国内でのTSH検査のハーモナイゼーションに向けて、2018年に厚労省に要望書を提出しました。そして、IFCC基準適合検査値(Phase IV)補正方法の各キットへの適用は、2021年3月末日までに各メーカーで行うようにしました。具体的には、新試薬の開発、補正係数の添付文書への記載、等の対応です。今後の課題は、基準範囲の取扱いや、高齢者、小児や妊婦などの基準範囲です。TSH値のハーモナイゼーションにより期待できることは、①検体検査の標準化による診断、治療の標準化、②研究成果の互換性によるガイドライン作成、③カルテのIT化があげられます。今後、FT4の検討を予定しています」参加者は菱沼先生の話に真剣に聞き入り、大変有意義な講演となりました。 11■ LABO – 2023.08「第48回 臨床検査精度管理調査結果検討会」の模様委員長の高木康先生血液学的検査担当の三ツ橋雄之先生免疫血清学的検査担当の山田俊幸先生微生物学的検査等担当の菅野治重先生特別講演を行う菱沼昭先生「第48回 臨床検査精度管理調査結果検討会」参加証日衛協News「第48回 臨床検査精度管理調査結果検討会」を開催
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