Labo_536
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加  齢足で首落のちスるナップ力   小指側にのせて外側を第9回ちょっとした工夫で効果アップ ふくらはぎを鍛えて元気に歩く加齢とともに歩行速度は落ちますが、その要因の一つに足首のスナップ力の低下があげられます。地面を後方へ蹴り抜く足首のスナップが、高齢者では弱くなるのです。また、ふくらはぎの筋肉には、血液を心臓に押し戻す働きもあります。心臓は全身に血液を送り出すポンプですが、全身から心臓に血液を戻すには筋肉のポンプ作用が必要です。特に高低差のある足元から血液を送り返すふくらはぎの働きは重要です。歩行能力にも血液循環にも強く関わるふくらはぎの筋肉ですが、そのサイズが小さいと死亡率が高まるという報告もあります。いくつになっても元気であるために、ふくらはぎの筋肉をしっかり鍛えておきましょう。 ふくらはぎは背伸びの運動のカーフレイズで鍛えられます。いつでもどこでもできる筋トレです。私はセルフのガソリンスタンドで、ガソリンを入れるときなどによく行っています。もちろん、給油には十分に注意を払います。ここで、やり方にちょっとした工夫をすると、効果がアップします。まずは親指側に体重をのせて反復できなくなるまで上げ下げを繰り返します。自然に行うと小指側に体重をのせるものですが、そこをあえて親指側にしっかりのせるように意識して行います。親指側のほうが小指側よりもくるぶしから遠いので、負荷が増します。また親指側に体重をのせると、ふくらはぎの内側(腓腹筋の内側頭)に主に効きます。体重をのせかえて、再び反復できなくなるまで繰り返します。少し負荷が軽くなり、今度はふくらはぎの外側(腓腹筋の外側頭)に主に効きます。こうすることで、ふくらはぎ全体をしっかり鍛えることができます。   ります。できる回数を繰り返してみ能な限り高く上げ切りましょう。かかとをおろし切らないと負荷が上が続いて、少しだけ休んで小指側にどちらに荷重するときも、毎回可ましょう。ふくらはぎの筋肉は、加齢で萎縮のよく進む部位であり、また、壺型で一番太い位置がわかりやすく、周径を容易に評価しやすい部位でもあります。アジアのワーキンググループ(AWGS)が作成したサルコペニア(加齢性筋萎縮症)の判定基準では、ふくらはぎが34㎝未満(男性)、33㎝未満(女性)をサルコペニアとしています。これを簡易に評価する方法に「指輪っかテスト」があります。座ってふくらはぎの一番太いところを親指と人差し指でつくった輪っかで囲います。指でつくった輪がふくらはぎの周径より大きい、つまり指で囲んで隙間ができる場合はサルコペニアの可能性ありと判断します。ただし、ふくらはぎは体型による個人差がとても大きい部位です。元気な若者でもふくらはぎを指輪っかで囲める人はいます。周径そのものだけでなく、太さが減っていっていないかという変化の程度や、足首のスナップを歩行でしっかり使えているかといった、機能面での評価も大事な判断要素となります。10カーフレイズは親指側に荷重すると負荷が上がります。また、体重を荷重する場所を変えることで、主に鍛えられる部位が変わります。面白いので鍛え分けを試してみてください。親指側に体重をのせる小指側に体重をのせる  カ  ー親フ指レ側イにズのはせて内側、  指  輪サっルかコテペスニトアはの簡易診断2023.09 – LABO ■令和医新谷本道哉(たにもと・みちや)運動生理学者、筋生理学者1972年、静岡県静岡市生まれ。大阪大学工学部卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。順天堂大学スポーツ健康科学部専任准教授。『みんなで筋肉体操』(NHK)の出演者として知られる。著書に『筋トレまるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『スポーツ科学の教科書――強くなる・うまくなる近道』(岩波書店)、『スポーツがうまくなる!! 身体の使い方、鍛え方』(マイナビ)など多数。

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