Labo_539
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令和4年度第23回一般公募エッセイ木内都緒子(41歳/秋田県)「検査がくれたもの」入賞作品紹介努力賞私は今、二つの疾患で通院している。一つは“好酸球性消化管疾患”。アレルギー性の炎症を起こす“好酸球”という白血球が関係したもので、胃腸の正常な機能が障害され、慢性的な下痢などを引き起こす疾患だ。私の主な症状は、深夜から早朝にかけて始まる頻回の下痢で、多い時は一日に10回前後のピンチが到来する。また、体重は昨年、半年で9キロほど減っている。もう一つの疾患は“副腎皮質ホルモン低下症(アジソン病)”。副腎から出されるべき体に必要なホルモンが、その必要量を慢性的に下回った状態だ。私の場合は主に、極度の食欲不振と低血圧、不安や無気力といった症状に悩まされた。ておらず、根本的な治療法がないため、国の指定難病とされている。とはいえ悲観はしていない。むしろ、そうだとわかっただけでありがたく、行き詰まった感覚から解放されたようでスッキリさえしている。悩まされてきた症状が、すべてそのせいだったと思えば納得できたし、「仕方ない」と割り切れることも増えた。また、「気長に付き合ってやるか~」と思えるようになったことで、自分の気持ちも軽くなった。これも皆、「模範的な数値」とされた血液検査と私の症状とのギャップに疑問をもち、検査に検査を重ねてくださった先生方のおかげである。「〇〇さんはぼくの科ではなくいずれの疾患も原因が特定され“代謝内科”がよいかもしれません」ある段階で紹介され受診した心療内科で、一通りの検査と問診、いくつかの抗うつ剤を試した結果から、そのように提案してくれた先生もいた。そしてそれはドンピシャだった。特殊な検査により、先に触れた“体に必要なホルモン”がまったく出ていないことがわかったからだ。うつ病に似ているが、うつ病ではない。だから抗うつ薬は効くはずがなかった。「検査ってすごい!」、純粋にそう思った。そして効果が期待できるとすれば、不足しているホルモンを補うこと。ステロイドを内服することだった。そして内服後まもなく、食欲不振がうそのようになくなり、おいしく食べられるようになった。同様に、“気持ちの問題では”とされることが多かった“おなかピンチ”が好酸球のせいだと教えてくれた大腸内視鏡検査にも救われた。大腸内の8か所から細胞をつまみ取って詳しい検査に回すのだが、これによって“症状を軽くできるのはステロイドのみ”とわかったおかげで、私なりの日常生活上の対策ができるようになったからだ。現在、私はステロイドの量を、先生と相談しながら少しずつ減らしている。むくみや体重増加といった副作用があるため、早く卒業したいが少しずつ……。完治はしなくても、不快な症状を緩解させられるなら、検査一つで人生を変えられると言ってもいいだろう。私はそんな検査の積み重ねに、大きな“ありがとう”を言いたい。検査の積み重ねに届け!「ありがとう!」11■ LABO – 2023.12

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