過剰な延命治療への反省からアメリカで発祥、法制度化も増える高齢者の救急搬送多くの家族に「心のこり」 1950年代まで、日本人の8割が自宅で死を迎えていました。それが現代は逆転し、8割が病院で死ぬ時代になっています。そんななか、近年、高齢者の救急搬送が増えています。その数は全搬送者数の5割を超え、特に、介護施設から救命救急センターへの搬送が目立ちます。搬送された高齢者の多くは、その日のうちに、あるいは短期間の搬送先での入院ののち、亡くなっています。本来、救命を目的とする救急搬送が、救命というより看取りに近い方々が搬送され、結果として、本人が望まない侵襲的な延命措置につながることも少なくありません。高齢者の救急搬送では、本人や家族が延命措置を望んでいるのかはっきりしない場合も多く、また、病院側が積極的な救命措置をした結果、家族が「本当にこれでよかったのか」「こんなはずじゃなかった」と後悔したり、悩んだりすることも多いようです。また、2018年に発表された、厚生労働省の『人生の最終段階における医療に関する意識調査』では、「最近5年間に身近な人の死を経験した」と答えた人に対し、「大切な人の死に対する心残りの有無」をたずねたところ、一般、医師、看護師、介護職員とも、半数前後が「あり」と回答しています。心残りの内容は、「あらかじめ身近で大切な人と人生の最終段階について話し合えていたら」「大切な人の苦痛がもっと緩和されていたら」が多くみられました(図表1)。 アドバンス・ケア・ プランニング(AdvanceCareとは、直訳すると「事前にケアを計画すること」。1990年代、本人が望まない過度な延命治療が社会問題になっていたアメリカで発祥しました。当時のアメリカでは、ER(救急外来)に運ばれてきた人が、Planning)122023.12 – LABO ■ることになるかもしれません。「将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、 本人を主体に、家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組み」、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が始まっています。どんなに健康寿命が延びたとしても、人生には、必ず終わりが来ます。私たちの身体は、けっして不老不死ではなく、老いて、病から回復する力も衰え、最期を迎えます。あなたはそのとき、どのような死に方をしたいですか? 病院で? 自宅で? それとも介護施設で?この事実と向き合い、人生をどう終えたいかを考え、家族と話し合っておかないと、望まない蘇生行為を受け図表1 どうしていたら心残りがなかったか一般国民 医師 看護師 介護職員0% 20.0% 40.0% 60.0% 19.9% 9.4% 15.6% 20.2% 21.7% 23.6% 6.5% 15.5% 4.2% 6.1% 1.6% 2.3% 18.0% 15.7% 23.1% 11.3% 17.8% 25.3% 17.2% 15.7% 14.5% 12.3% 20.2% 37.3% 36.8% 37.4% 38.0% 39.6% 39.2% 37.2% 33.0% 36.4% (複数回答)大切な人の苦痛がもっと緩和されていたらあらかじめ身近で大切な人と人生の最終段階について話し合えていたらもっと早く医療や介護関係者等と人生の最終段階について話し合いをしていたら信頼できる医療や介護関係者等と出会えていたら同じ医師に継続して診療してもらえていたら望んだ場所で療養できていたら望んだ場所で最期を迎えていたらその他Medical Trendメディカル・トレンドアドバンス・ケア・プランニング(ACP)
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