わが国での愛称は「人生会議」地域や医療機関ごとに推進「最後の晩餐に食べたいもの」あたりから、始めよう心身の状態に応じて意思は変化することがあるため、何度でも繰り返し考え、話し合いましょう工呼吸器につながれ、身体中にチューブを通されている様子から、「スパゲッティ症候群」などという言葉も生まれていました。延命治療とは、老化や病気により生命の維持が難しくなった人に対し、医療的措置によって一時的に生命をつなぐ行為で、人工呼吸、人工栄養、人工透析などがあげられます。急変時の心肺蘇生もACPの課題のひとつです。高齢者や進行したがん患者などにおいて、心肺蘇生が与えるダメージも大きいのです。 その後、ACPは、欧米を中心に多くの国や領域で、法的な制度を含めて、枠組みが議論されています。おおよそ「終末期ケアに関わる話し合いのあらゆるプロセス」を指しているようです。超高齢社会となり、人生の終盤期の医療ケアに関する問題が山積しているわが国では、2018年、人生の最終段階の医療に関する厚生労働省の指針にACPが盛り込まれました。「人生会議」という愛称もつけられ、国が活用を主導。リーフレットや動画をつくって普及・啓発を行っています。自分自身のテーマとし目を向けてもらえるように、「終末期医療」という表現も「人生の最終段階における医療」に改められました。『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』では、「ACPとは、将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みです」と説明しています。東京都の「私の思い手帳」、がん診療連携拠点病院やかかりつけ医などで配布している「私のノート」はじめ、ACPの手引きや記録シートを用意している地方自治体や医療機関も増えています。文書にして共有する場合が多いのですが、地域や医療機関ごとに取り組みに差があり、書式がさまざまなのが実情です。命の危険が迫った状態になると、約70パーセントの人は、医療やケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることができなくなるといわれています。自らが希望する医療やケアを受けるために大切にしていることや望んでいること、つまり、どこでどのような医療やケアを望むかを自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要です。老いや死を考えることは、決して楽しいことではありません。そのため、忌避する人も多いようですが、ACPの目的は、かけがえのない人生を豊かにすることです。死期のいかんではなく、最期まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目した、最適な医療・ケアが行われるべきだという考え方に基づいています。厚生労働省の「人生会議」の案内では、「あなたの大切にしたいことや、して欲しくないことから、まず話をしてみてはいかがでしょうか?」と提案しています(図表3)。話をしているうちに、自分でも気づかなかった気持ちに気づかされることも多いものです。13■ LABO – 2023.12図表3 例えばこんな希望を 伝えましょう (「人生会議」より)図表2 もしものときのために 「人生会議」あなたにとって大切なことは、どんなことですか?(複数回答可)話し合いの進め方(例)あなたが大切にしていることは何ですか?あなたが信頼できる人は誰ですか?信頼できる人や医療・ケアチームと話し合いをしましたか?話し合いの結果を大切な人たちに伝えて、共有しましたか?★参考資料『人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン』 厚生労働省/『人生の最終段階における医療に関する意識調査 報告書』 厚生労働省『「平穏死」のすすめ』石飛幸三著(講談社)/生命倫理VOL.25アドバンス・ケア・プランニングに関する一考察90歳だろうが、100歳だろうが人・家族や友人のそばに いること ・仕事や社会的な役割が 続けられること ・身の周りのことが 自分でできること・できるかぎりの医療が 受けられること・家族の負担に ならないこと・少しでも長く生きること・好きなことができること・ひとりの時間が 保てること・自分が経済的に 困らないこと・家族が経済的に 困らないこと・痛みや苦しみがないことMedical Trendメディカル・トレンド
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