Labo_541
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■■■■■■■■1■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ゃ■■■■■■■■■日本において梅毒は、1948年から施行された性病予防法により全数届出が求められ、その後、1999年施行の感染症法で5類感染症の全数把握対象疾患に定められ、診断した医師は7日以内に管轄の保健所に届け出ることが義務づけられています。図表1にみるように、梅毒届出数は1961年以降、約50年間で大きく減少しました。それが、2011年に増加に転じ、とくに2021年以降、急増しています。2022年には1万3258例と、半世紀ぶりの高水準を記録しました。なお、男女比率は、2019~2022年の4年間の累積届出数計3万3745例のうち男性が66パーセント、女性が34パーセントと報告されています。2013年以降、特徴的なのは女性感染者が急増していることです。そして、女性感染者の4分の3は20~30代であり、若年層が中心となっていることです。また、これに比例するように母子感染症である先天梅毒が増加しています。梅毒に感染している妊娠女性は年間200例を超えています。そして、先天梅毒は2013年まで年間数例であったものが、今では年間ています(図表2)。梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌を病原体とする細菌感染症です。人が唯一の自然宿主で、おもに性的接触により伝播します。感染者の皮膚や粘膜の病変から出たし滲んしつ出ゅ液などに接触すると、それに含まれる梅毒トレポネーマが粘膜や皮膚の小さな傷から侵入して感染します。梅毒の典型的な自然経過とされるのは、つぎの3段階です。皮膚に侵入し3週間程度経過後)細菌が入り込んだ場所を中心に3ミリから3センチほどの腫れや潰瘍ができますが、数週間で消失。痛みやかゆみを感じることはほとんどありません。度経過)細菌が血液によって全身に運ばれるため、手や足など全身に赤い発疹が現れることがあります。発疹がバ■Ⅰ期(梅毒トレポネーマが粘膜や■Ⅱ期(症状出現から4~10週間程■Ⅲ期(感染後数年~数十年後)ラの花の形に似ているとして、「バラ疹」と呼ばれています。ほかに、発熱やけん怠感など、さまざまな症状が出ることがあります。この時期までは症状が自然に消えることがありますが、梅毒が治ったわけではありません。この時期は、とくに性的接触での感染力が強いとされています。全身で炎症が起こり、骨や臓器に「ゴム腫」と呼ばれるゴムのような腫瘍ができることがあります。治療薬が普及した現代の日本ではここまで進むことはまずありませんが、以前は大きなできものができたり、鼻が欠けたりすることがありました。さらに進行すると、脳や心臓、血管に症状が現れ、麻痺が起きたり、動脈瘤の症状が出たりすることがあります。なお、すべての症例が典型的な経過をたどるわけではなく、異なる病期の症状や所見が併存することもあります。 梅毒の検査は、コロナ禍で有名になったPCR検査や血液検査による抗12 ■■■■■■■■■■■2024.02 – LABO ■世界中で梅毒が流行しています。国内では、2022年に梅毒感染者数が、感染症法の5類感染症の全数把握対象疾患に定められて以来初となる10,000人を突破しました。2012年までは、MSM(男性同性間性的接触者)のなかでわずかにみられていた梅毒ですが、2013年以降は、若い世代の女性感染者が急増しています。梅毒は性風俗を介して感染するケースが多いとみられていますが、性風俗と直接関係がない感染や感染経路のわからないケースがそれを上回るように報告されています。「自分は大丈夫」と思っていても、恋人や配偶者からうつってしまうこともあります。梅毒にかかっている女性が妊娠すると、流産や死産、胎盤を介して胎児に母子感染し、難聴や知的障害など重篤な障害を引き起こす「先天梅毒」になるリスクが高くなります。梅毒の、そして先天梅毒の急増にどうしたら歯止めがかけられるか、まず、「自分は大丈夫」ではなく、正しい知識をもつことから始めましょう。        30例を超え、今後の増加が心配され20〜30■■■■■■■■■Medical Trendメディカル・トレンド妊婦からうつる「先天梅毒」の子ども過去最多に

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