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Aいとたっりも知A7■ LABO – 2024.02参考文献:「専門医が教える 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群診療の手引き」(編著:倉恒弘彦、松本美富士、日本医事新報社)、「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」(著者:堀田修、あさ出版)、NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会ホームページ、日本医療研究開発機構(AMED)ホームページ、「慢性疲労症候群の病態機序とその治療」(神経治療Vol.33、2016年)、NHK福祉情報サイト「ハートネット」、毎日新聞(2021年11月22日、2023年10月5日) いまのところ、この病気に対する根治療法はなく、活動量の調整(適切な休憩)や対症療法が試みられているのが現状です。 これまで行われてきた治療内容についての調査では、漢方薬治療が多くの患者さんに実施されてきました。そのほか、薬物療法では向精神薬、鎮痛薬、ビタミン剤などが用いられています。また、運動療法、認知行動療法、鍼灸、ヨガ、冷え対策・保温療法などが実施されてきています。▶大阪市立大学医学部附属病院疲労クリニカルセンターの例・内科的治療 免疫力低下に対しては補中益気湯や十全大補湯などの漢方薬、酸化ストレスの上昇や抗酸化力の低下に対しては抗酸化を高める治療(ビタミンC大量、還元型コエンザイム10、イミダペプチドなど)を行っています。 また、消炎鎮痛薬による鎮痛対策のほか、精神症状がみられない場合でも抗うつ薬を投与することで改善につながることも多いとしています。 同施設では治療にあたり内科的評価とともに精神科的評価を必ず実施し、治療方針を決めています。▶名古屋大学医学部附属病院総合診療科の例・漢方治療は西洋医学的な診断や患者の症状に対して画一的に漢方薬を投与するのではなく、漢方理論における患者の「証」にもとづいた治療を行っています。その結果、患者さんの約75%が身体活動度の改善がみられているとしています。・心理療法では、ME/CFSの診断後早期に臨床心理士による面接を行い、心理療法が必要かどうか、必要であればどのような心理療法を選択するかを判断しています。・運動療法は、疲労が生じないように負荷を調整しながら、目標に向けて少しずつ運動時間と強度を増やしていく段階的運動療法を行っています。 また、過度の安静は、廃用による筋力低下・自律神経機能の低下などによる病状の増悪をもたらすため、運動についての適切な生活指導は治療の根幹をなすと考えられています。具体的には、生活のリズムを整える指導や、ストレッチ、ラジオ・テレビ体操、散歩といった運動を取り入れた指導などが行われています。現在、国内で効果を上げている新しい治療法には次のようなものがあります。▶和温(WAON)療法全身を気持ちよく温める治療法です。具体的には、60℃に設定された遠赤外線均等乾式サウナ室に15分間入り、その後、温めたタオルで全身を包んで30分間の安静保温を行います。和温治療群と非和温治療群の治療効果を比べたところ、疲労、痛みの軽減効果だけでなく、睡眠の改善、食欲の増進作用も和温治療群のほうが有意に高いことがわかりました。▶経頭蓋磁気刺激療法(TMS)TMSとは、コイルに電流を流し、頭の表面から脳に磁気刺激を与える治療法です。うつ病や脳卒中などの治療に用いられており、ME/CFSの患者さんにも効果が出ていると報告されています。▶上咽頭炎治療(Bスポット療法)Bスポット療法のBとは鼻咽腔の頭文字です。上咽頭は鼻の奥のほうにあり、刺激を伝達する神経線維が豊富な場所です。塩化亜鉛溶液をしみこませた綿棒で上咽頭をこする治療で、近年、耳鼻咽喉科の病気以外の慢性疾患へ応用され、よい結果が出ています。ME/CFSの障害部位と考えられる脳に近い上咽頭の慢性炎症の治療はME/CFSの改善に役立つ可能性があると考えられ、実際、Bスポット療法を積極的に行っている医療機関では効果を上げています。Column漢方薬や症状を緩和する薬の使用、運動療法などが行われていますME/CFSの患者さんには、どのような治療が行われているのですか?国内では和温(WAON)療法などのいくつかの治療法が効果を上げています期待できる新しい治療法はありますか?ナイチンゲールもME/CFSだった!? イギリスの看護師「フローレンス・ナイチンゲール」は、医療制度改革に大きく貢献したことで近代看護教育の母といわれています。しかし、19世紀半ばのクリミア戦争に従軍したあと疲労虚脱状態に陥り、亡くなるまでの約50年間の大半をベッドの上で過ごしました。現在、ナイチンゲールの誕生日である5月12日がME/CFSの世界啓発デーとなっています。Q1Q2ME/CFSQ&A

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