医療ロボット「ダビンチ」は、アメリカに本社を置き、ダビンチの開発、製造、販売、テクノロジートレーニングの提供などを行っているインテュイティブサージカル社が、1990年に販売を開始しました。2000年には、腹腔鏡手術領域においてFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を取得しています。ダビンチは2022年末時点で7500台以上が世界に導入され、日本はアメリカについで多いそうです。ダビンチのほか、日本では(ヒューゴ)、日本発の(ヒノトリ)などが使われていますが、ダビンチサージカルシステムが、世界的にリーダー的存在といえるようです。ダビンチによる手術は、ロボットが自動的に進める手術ではありません。あくまでも、手術を行うのは医師で、ロボットの役割は医師が行う手術を「支援すること」です。そのHugohinotoriため「ロボット支援手術」 あるいは「ロボット支援下手術」という名前がつけられています(以降、「ロボット支援手術」と表記)。医師は、ダビンチのコントローラーを操作して、ロボットアームの先に装着された器具を動かしながら手術を進めます。ロボット支援手術が従来の手術と大きく異なる点は、執刀医が手術台から離れた操縦席でロボットを遠隔操作して行うことです。ダビンチには人間の腕のような働きをする複数本のアームが装備されており、患者の皮膚数か所をそれぞれ1~2センチほど切って、アームの先に取り付けた鉗か子し(先端に、はさみ、電気メス、ピンセットなどがついた器具)や3Dカメラを体内に挿入し、モニターを見ながら手術を行います。ロボット支援手術は、従来の内視鏡手術が進化したものということもできますが、内視鏡手術と比べると、より正確で細かい手術が可能であるという特徴があります。ロボット支援手術で使用される医療用ロボットダビンチは、図表2のように「サージョンコンソール」「ペイシャントカート」「ビジョンカート」の3つの装置で構成されています。手術を担当する執刀医は、サージョンコンソールに着席して画像を見ながらコントローラーを操作します。すると、執刀医の操作通りにペイシャントカートのロボットアームが動きます。ビジョンカートには、執刀医が見ているのと同じ映像が映し出されます。この画像を見ることで、手術スタッフも手術のプロセスを確認できます。ダビンチによるロボット支援手術には、つぎのようなすぐれた特徴があります。世界中で7500台以上が活躍ダビンチサージカルシステム執刀医がダビンチを遠隔操作ダビンチ手術の正式名称は「ロボット支援手術」駆使されたハイテク技術でより自由で繊細な手術が可能に図表1 ダビンチ支援手術の実績医師は患者に触れず、患部の立体画像を見ながら遠隔操作でアームを動かす──ハイテク技術を駆使した画期的な医療ロボットが活躍しはじめています。1990年代にアメリカで開発された手術支援ロボットDa Vinci(ダビンチ)が、2000年以降、日本にも導入されました。販売価格約3億円、購入後の維持費が年間約1000万~2000万円と高額ながら導入する病院が増え、現在、ダビンチによるロボット手術は、呼吸器、心臓、消化器、泌尿器、婦人科など各科領域の疾患に健康保険が適用されています。ロボット手術の実際、患者にとってのメリット・デメリット、適用疾患や費用など、ロボット手術の現在をまとめました。その他一般外科婦人科泌尿器科1,500,0001,250,0001,000,000750,000500,000250,0002015 2016 2017 2018 2019 2020(年)ん11■ LABO – 2024.03Medical Trendメディカル・トレンド進化し続ける「ロボット手術」
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