Labo_542
7/16

持ちと体力にブレがなくなったような感覚を持つことができたのです。いろいろな方法がありますが、僕にとってはこの食事のリズムを保つことが体調管理の1つです。――生活を送る上でも、戦地での体験が生きているのですね。渡部 飲食についてはいろいろと指摘を受けました。例えばのどが渇いているときにザクロのジュースを一気に飲み干したら、そういう飲み方はよくないと。少しずつ何回かに分けて飲むように教わりました。食事もいきなり肉にかじりつくのではなく、まずデーツ(ナツメヤシ)などのフルーツを食べてからだと。イラクの人たちは子どもたちにもそう教えていましたね。砂漠の民、山の民の生活の知恵であり、7    大きな影響を受けました。家族との向き合い方、子どもとの接し方、地域の人たちとの触れ合い。戦地で出会ったたくさんの人たちから、僕もこうありたいという姿を学んできました。――戦場カメラマンとして、今後の目標はありますか?渡部 僕には夢があります。世界中から戦争や紛争がなくなり、戦場カメラマンとしての仕事がいらなくなることです。そんなときがきたら、僕は世界中の学校に行って、子どもたちの表情を撮る学校カメラマンになりたいです。でも現状は世界中でいまだに戦争は起きている。戦場で泣いている子どもたちのことをたくさんの方に知ってもらいたいという思いは、初心から変わっていません。それはこれからも自分のペースで続けていきたいです。――日本は終戦から78年が経ち、戦争の写真や映像を見ても現実味がないように感じ、目を背けたくなる子どもたちも多いと思います。渡部 戦地の銃撃、犠牲者の悲しみをニュースなどで目の当たりにすると、本能的に見たくないと感じるのは、普通の感覚です。確かに今の日本にとって、戦争は遠い国で起こっていることですが、戦地から帰国したときに感じるのは、日本の暮らしの中にも世界とつながる入り口はたくさんあるということです。スポーツや映画、小説、何でもいいので自分が好きなことを突き詰めていくと、現代はすぐに世界とつながることができます。自分が好きなアニメを通して、例えばウクライナの人とつながる。やりとりをしていると、実は家がないということがわかる。僕自身もはじまりは、ムブティ族に会ってみたいという好奇心からでした。好きなことを突き詰めると、自然と世界とつながり、情勢にも興味が出てくる。それが入り口でもいいと感じています。■LABO – 2024.03戦場カメラマンとしての夢は、世界から戦争がなくなり、仕事がいらなくなることです!渡部さん愛用のカメラ。銃撃に備えて、反射しないように黒いテープで覆っている『晴れ、そしてミサイル』ウクライナ情勢について書かれた本ディスカヴァー・トゥエンティワン (2023年10月20日発売)1993年6月~ アフリカ、ザイール内戦取材       (戦場カメラマンとしてスタート)2003年1月~ イラク戦争取材        (戦場カメラマンとしてのターニングポイント)2006年4月  イラク戦争戦後3周年取材2009年9月~ アフガニスタン米軍従軍取材2012年4月~ シリア情勢取材2014年4月~ ウクライナ情勢取材スタート2015年4月~ トルコ情勢取材スタート2016年1月~ ミャンマー情勢取材スタート2017年10月~ フィリピン情勢取材スタート2018年7月  インドネシア過激派組織テロ事件取材2019年5月  スリランカ連続爆破テロ事件取材2022年5月~ ウクライナ情勢取材Yoichi Watanabe‘s DATA(主な取材歴)

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る