今は毎日、靴下も座らないで立って履くようにしています。――リハビリを継続される中、今いちばん楽しいことは何でしょうか?佐藤以前はゴルフ、スキューバダイビング、スキーなど体を動かすことが大好きでした。発症してまだ1年未満の今は、飛んだり跳ねたりする縦の動きは控えています。ゴルフのような横の動きはいいと言われ、すでに始めています。カート乗り入れ可能なゴルフ場に、息子たちが連れていってくれて……。打球が谷に行ったりOBの場合は、そのホールはあきらめて歩くだけにして、平地を歩くのにはだいぶ慣れてきました。アンジュレーション(起伏)のあるところを歩くのは少し難儀ですが、体幹とバランス感覚が養われるので、いいリハビリになっています。今はゴルフ場に行けるだけで幸せ、家族に支えられて一緒にプレーするのがとても楽しいです。――今回は、ご家族の支えが大きかったことでしょう。改めて奥様と2人の息子さんに感謝ですね。佐藤支えがなかったら、もうダメでしたね(笑)。最近結婚した長男は28歳、次男は25歳ですが、入院中は明るいポジティブなLINEで励ましてくれました。家族は僕の前では誰も泣かなかったし、いつも笑に自分でできました。1週間後のはじめて6 のリハビリルームでの訓練は、平行棒の間に立ち、後ろから抱えてもらって足を前に出す練習でした。足はまったく動かず、立てただけでしたが、今はまだこの状態でいいと思えて、うまく表現できないのですが、前向きな強い気持ちが沸々と湧いてきました。東京への転院は、鳥取の病院に入院してから3週間後で、新幹線で東京駅に向かい、駅から長男の車でそのまま病院へ。家には帰れず、ちょっと複雑な気持ちではありました。――本格的にリハビリを始めると、驚異の回復力を発揮されましたね。佐藤普通の人とは違うとは言われました(笑)。発症当時はできなかったことがだんだんできるようになってきた時点で、今度は、リハビリ専門の病院に移りました。そこにはHALという機器が2台あり、装着して電気を流すと何が弱いのかがわかります。僕は左が弱かったので、そこを徹底的に強化しました(HAL:HybridAssistiveLimb は体に装着することで身体機能を改善・補助することができる世界初のロボットスーツ)。――短時間でここまで回復するには、かなり激しい自主トレをされたのでしょうか。家族の支えを力に予想を覆す復帰「普通の人とは違う」―医者も驚く驚異の回復力佐藤毎日4時間、規則的なリハビリをし、空き時間は自主トレに励みました。寝ている以外は朝から晩まで体を動かし、毎日汗だくでした。早く歩けるようになりたい、早く家へ帰りたい、早くみんなに会いたいという思いで、苦もなくできました。「入院中は暇でしょう」と差し入れていただいた本は、1ページも読む暇がありませんでした(笑)。――自主トレに励む姿や、実際に回復が進まれている様子に、周りのみなさんもずいぶん影響を受けられたのでは……。佐藤隣で90歳くらいの方が筋トレをしていたり、脳性麻痺で半身が動かない方が頑張っていらしたり、僕のほうが勇気をいただきました。リハビリはすぐに結果が出ないので、メンタルヘルス的に落ち込み、うつ病になる方も多いといわれています。だから僕は、「リハビリは明日や明後日のためではなくて、1カ月後、1年後に結果が出るので、あきらめずに頑張りましょう」と多くの方にメッセージするようにしています。3週間後にはリハビリ病院を退院し、今は週に1、2回、通院し、パーソナルトレーナーと筋トレもしています。それ以外は日常生活がリハビリです。退院するときに「バリアフリーも手すりもない普段どおりの生活に」というのが退院の条件でした。普段の生活をするのが退院後のリハビリなので、家族はやさしくしないでと……。2025.05 – LABO■驚異の回復力を発揮し、今度はリハビリ専門の病院へ東京の病院に転院。「ようやく立てるようになりました」駆けつけた長男と。「家族の笑顔に助けられました」(鳥取市で)緊急搬送された鳥取市の病院で。「動かない下半身に絶望的になりました」
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