Labo_No.557
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職場に義務づけられた対応や対象となる条件は?職場での熱中症による年間死傷者数は1千人以上熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節がうまく働かなくなったことで生じる、さまざまな症状の総称です。主に熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分類されます(表1参照)。熱失神は、体温の上昇によって、皮膚表面に血液が集められるために循環血液が減少している状態で、脳貧血のような立ちくらみ、めまいといった症状を起こします。大量の発汗にともなって塩分を失うと起こるのが熱けいれんで、四肢や腹筋などに痛みをともなったけいれんが生じます。発汗が顕著で、脱水と塩分不足によって起こるのが熱疲労で、全身倦怠感や頭痛、めまい、吐き気、血圧低下といった症状が出ます。最も重症で、死亡事故につながることがあるのが熱射病です。体温の上昇が急激に進行し、意識障害、高熱などの症状が起こります。厚生労働省がまとめた「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(図1参照)によると、2023年の死傷者数(死亡者および休業4日以上の業務上疾病者の数)は1106人、前年から279人増加しています。死傷者のうち、死亡者数は2019年以降の業種別の熱中症による死傷者数をみると、最も多かったのが「建設業」(886人)で、「製造業」(846人)、「その他」(701人)、「運送業」(583人)、「商業」(435人)、「警備業」(428人)、「清掃・と畜業」(272人)、「農業」(95人)、「林業」(36人)と続きます。また、2019年以降の月別の死傷者数をみると、約8割が7月から8月にかけて発生、時間帯は15時台が最も多く、次いで11時台が多くなっていました。年齢別の発生状況では、約半数が50歳以上でした。2023年度の熱中症による死亡災害の事例では、発症時・緊急時の措置の確認や周知をしていたことを確認できなかった事例や暑さ指数(WBGT)の把握を確認できなかった事例が多かったことが明らかになっています。つまり、職場における熱中症による死亡災害の多くは初期症状の放置や対応の遅れがあったということになります。加えて死亡者の約7割は屋外作業であったため、近年の気候変動の影響によってさらなる増加が懸念されています。こうしたことから、仕事現場において死亡に至らせない(重篤化させない)ための適切な対策の実施が早急に求められ、厚生労働省は2025年1月、職場における熱中症対策の強化に向けて罰則つきで対応を義務づける方針を示し、夏に間に合うように、6月に施行されることになったのです。改正された「労働安全衛生規則」によると、対象は次のように定められています。 ・暑さ指数であるWBGTが28度または、気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上または1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれるもの。義務づけられた対応は主に2つあり、1つ目は熱中症の自覚症状がある労働者、あるいは熱中症のおそれがある労働者をみつけた人が、その旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとに定め、関係作業者に周知することです。また、報告を受けるだけではなく、積極的に熱中症の症状がある労働者をみつけるための措置として、122023年に職場での熱中症で亡くなった人は31人。そのほとんどが、初期症状の放置や対応の遅れによるものであることが指摘されています。そこで厚生労働省は、働く人を熱中症から守るために、職場での熱中症対策について、罰則つきで義務化とする方針を決め、2025年6月から施行されます。義務の対象や求められる対策などについて紹介します。31人となっています。2025.06 – LABO ■職場での熱中症対策企業に罰則つきで義務化されるMedical Trendメディカル・トレンド

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