Labo_No.557
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膀胱炎の治療の基本は抗菌薬投与5 いきます。尿検査を受けるときは、より正確を期すために、採尿にあたり、最初に出てくる尿(初尿)はとらずに途中の尿(中間尿)だけを採取します。正確な検査結果を出すためには、採尿前にも手を洗い、陰部の清拭を行ってから採尿することも大切です。■尿定性検査 薬剤のついた試験紙に尿を染み込ませ、試験紙の変色の度合いから陰性、陽性を評価する検査です(図表2)。手技が簡便なため、学校の検尿や健康診断などのスクリーニング検査としても用いられています。膀胱炎に対しては、菌が放出する「尿亜硝酸塩」と、一部の白血球中に存在する酵素「白血球エステラーゼ」の2項目を調べます。るため必ず行います。この検査では多くの場合、中間尿もしくはカテーテル尿(尿道から膀胱、もしくは尿管にカテーテルを挿入して採取する尿)を採取し、検査室で細菌を培養させます。中間尿の場合は生菌数が10⁵CFU/mL以上、カテーテル尿の場合は生菌数が10³CFU /mL以上のときに有意細菌尿(尿中に存在する細菌の量が一定の基準を超え、臨床的に意味のある量である状態)とされます。なお CFU(Colony Forming Unit)とは1mL中に10³個の細菌の集団(コロニー)が存在するという意味です。膀胱炎の治療の基本は、抗菌薬投与と水分摂取とされています。とくに症状がある場合には、原因菌を推定して抗菌薬を投与します。治療期間(抗菌薬の服用期間)は、単純性膀胱炎では3~7日間、複雑性膀胱炎では7~14日間の治療を必要とし、場合によっては21日間の治療を行うこともあります。閉経前の女性の急性単純性膀胱炎の原因菌の60~80パーセントは大腸菌であり、抗菌薬はまず大腸菌をターゲットとして選択します。閉経後の女性の単純性膀胱炎は、治癒尿亜硝酸塩は、食物由来の硝酸塩が細菌によって還元されて尿亜硝酸塩を生成する反応を利用して、尿中の細菌の有無を調べています。また、白血球エステラーゼが検出されるということは、身体の免疫機能が感染に対抗していることを意味します。ただし、尿中細菌が硝酸塩を還元するのに約4時間必要であることに加えて、還元作用をもたない細菌も存在するため、尿中細菌が存在していても陰性となる場合(偽陰性)があるので注意が必要です。■尿にょ沈うち渣んさ検査尿を遠心分離機にかけて、尿に含まれる成分を沈殿させ、顕微鏡で沈殿物の中にどんな成分が出ているかを調べる検査です。尿定性検査で尿白血球や尿亜硝酸塩、尿タンパク、尿潜血反応が陽性となった場合や、尿亜硝酸塩の偽陰性の可能性がある場合は、より一層注意深く尿沈渣成分を観察します。膀胱炎では、白血球や細菌のほかに赤血球などが観察されます。感染がある場合、通常は1種類の細菌が数多く観察されます。■尿培養検査この検査は、尿路感染症の原因菌の種類、およびその細菌にどのような薬剤が有効かを調べる検査です。急性単純性膀胱炎は原因菌の80パーセントが大腸菌のため、尿培養検査は必ずしも行いませんが、複雑性膀胱炎の原因菌は多岐にわた■ LABO – 2025.06図表2 尿定性検査尿に試験紙を 1 秒ほど浸す項目ごとの判定時間をおいて判定するさまざまな検査試薬を染み込ませたろ紙の色の変化で判定判定前陰性判定後陽性

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