Labo_No.559
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に、2025年の感染の届け出によると、発症は10~19歳が最も多く、2番目に多いのが5~9歳です。このため、日本小児科学会では任意接種として、「3種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風)」を「就学前」に追加接種すること、また現在「11~12歳」の定期接種になっている「2種混合ワクチン」は百日咳を含めた「3種混合ワクチン」にすることを推奨しています。さらに、薬が効かない耐性菌の増加も問題となっています。百日咳の治療は、マクロライド系抗菌薬と鎮咳去痰薬などの対症療法が中心となります。痙咳期の抗菌薬投与は、症状の改善効果はあまり期待できませんが、周囲への感染を低下させることがわかっています。しかし、耐性菌の報告が増加していることから、日本小児科学会は、5日間の適正な抗菌薬による治療が終わっても、咳が続いている間はマスクなどの咳エチケットが必要であることを呼びかけています。大人の場合も基礎疾患のある人や高齢者は重症化する場合がありますが、普通の咳が長引く程度の軽症であることが少なくありません。大人の感染で大きな問題となるのが、百日咳と診断されないまま感染を広げてしまうことです。乳児期の感染源の多くは、家族および医療従事者です。日本環境感染学会では、産科病棟スタッフ、新生児や乳児をケアするスタッフ、妊婦や新生児と接触する医療関係者に対して、百日咳含有ワクチンの接種を推奨しています。また、ワクチン接種前の乳児への感染例が多いことから、オーストラリアや欧米諸国では、妊娠後期の妊婦に百日咳含有ワクチン(Tdap)を接種する「母子免疫ワクチン」が推奨されています。妊婦がワクチンを接種することで、母体から乳児への移行抗体を増加させて、乳児の重症化を防ぐことがねらいです。しかし日本では、副反応発生時の対応など課題が多く、Tdapは認可・販売されていません。乳児がいる家庭では特に注意して、咳が長引く場合は病院を受診すること、手指消毒、マスクなどの咳エチケットといった感染対策を徹底することが大事です。夏は人の移動が多くなることもあり、引き続き警戒が必要です。届出数自覚がないまま感染を広げることがある■ LABO – 2025.0813第1週第2週 第3週 第4週 第5週 第6週 第7週 第8週 第9週 第10週 第11週 第12週2018 年(n=734)2019 年(n=3833)2022 年(n=138)2023 年(n=123)2021 年(n=137)2025 年(n=4200)7006005004003002001002018 年(n=12,117)2019 年(n=16,850)2020 年(n=2,794)2021 年(n=704)2022 年(n=494)2023 年(n=1,000)2024 年(n=4,054)2025 年(n=4,200)0%  10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%0~4歳 5~9 歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60歳以上★参考資料厚生労働省「百日咳」、小児科学会予防接種・感染症対策委員会「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」、国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト、日本産婦人科学会、感染対策連携委員会、周産期委員会「乳児の百日咳予防を目的とした百日咳ワクチンの母子免疫と医療従事者への接種について」0診 断 週2020 年(n=1849)2024 年(n=127)表1 第1~12週における診断週別百日咳届け出数   (2018~2025年)表2 各診断年における届出例の年齢分布  (2018~2025年)Medical Trendメディカル・トレンド

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