聴力健診については、少しでも聴こえにくさを感じたら耳鼻咽喉科で聴力検査を受けること、そして、自覚はなくても65歳以上には聴力検査をすすめています。受診の目安については「聴こえのセルフチェック」が参考になります(表3参照)。難聴は聴力の程度によって軽度、中等度、高度、重度に分類されます。WHO(世界保健機関)では、従来左右どちらかの耳の会話音域の聴力が25デシベル以内であれば「難聴なし」と扱ってきました。しかし、最近になって20デシベル以上であれば「軽度難聴」とし、難聴対策の対象にすることを発表しました。難聴による悪影響を最小限にとどめるために、早期の対策が重視されるようになっているのです。軽度、中等度であれば日常生活で困る場面は少ないですが、認知症の発症を予防するためには、軽度の段階から補聴器を装用することが効果的だと考えられています。補聴器の装用が認知症のリスクを軽減するという研究報告もあります。補聴器については、日本は欧米と比較して普及率や満足度が低いというのが実情です。補聴器に関するトラブルも多く、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、同学会が認定した「補聴器相談医」の診察を受けること、補聴器が必要と診断されたら、「認定補聴器販売店」もしくは「認定補聴器技能者」が働く店舗での購入をすすめています。難聴と診断されていなくても聴力は加齢に伴って徐々に低下していくため、若いうちから難聴予防に取り組むことが大切です。難聴のリスクには次のようなものがあります。・中耳炎歴、髄膜炎歴・喫煙・耳硬化症・騒音暴露歴ヘッドホン・イヤホンの影響で難聴が若年化傾向にない点 ・耳毒性製剤の使用歴・頭部打撲症・栄養の偏りこれらを踏まえてできる対策としては、4つのポイントがあります。①動脈硬化の予防と禁煙②糖尿病の人は治療を受ける③適切なカロリー摂取と運動④騒音暴露を避ける騒音暴露については、ヘッドホンやイヤホンを使って「大きな音を長時間繰り返し聞く」ことによるヘッドホン・イヤホン難聴が問題となっています。実際にこの10年で10~30代の聴力が低下傾向にあると報告されています。WHOでは成人の場合若年者(15~34歳)は75デシベルで基準としています。ヘッドホンやイヤホンを使用する際は音量を上げ過ぎない、1時間に策も大切です。歯を80歳で20本残そうと1989年にスタートした「8020運動」は、初期の達成率は10%以下でしたが、現在は50%以上になっています。「聴こえ8030運動」も同様に普及し、達成率が上がることが期待されています。■ LABO – 2025.09聴こえは徐々に低下することが多く、自覚がないまま難聴になっている方がたくさんいます。まずは簡単な聴こえのセルフチェックから始めてみましょう時よ々くああるる4点 2点 0点▼▼▼40時間が難聴にならないための許容80デシベルで1週間あたり40時間、13□ □ □ □ □ □□ □ □□ □ □ □ □ □□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □□ □ □HHIA-S(Hearing Handicap Inventory for the Adults - Screening)より引用★参考資料厚生労働省「聴こえ 8030 運動」特設サイト、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴啓発プロジェクト」初対面の人と会うとき、聴こえなくて困る 家族と話をするとき、聴こえにくくてイライラする 職場の人やお客さんの話が聴こえにくくて困る 最近、聴こえづらいと感じる 友人、親戚、近所の人と話すとき、聴こえにくくて困る 映画館や劇場などで聴き取りづらい 聴こえにくくて、家族の人と口論になる テレビやラジオを聴くとき、聴こえにくくて困る 聴こえにくいことで、私生活や社会活動が制限されていると思う 親戚や友人とレストランにいるときに、聴こえにくくて困る10点以上 早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう4~8点 耳鼻咽喉科で聴力検査をしてみましょう0~2点 定期的に聴こえをチェックしていきましょう*点数の計算は、「聴こえ8030」へアクセスしてください。https://kikoe8030.jibika.or.jp/#selfcheck30dB未満~40dB~70dB ~90dB 90dB以上 小さい声やささやき声もほぼ問題なく聴こえる。小さい声や騒がしい場所での会話が聴きづらい。テレビの音が大きいと言われる。普通の会話が聴きづらく、聴き間違いが増える。自動車がすぐ近くに来るまで気づかない。大きな声も聴きづらい。ホームに入る電車の音やトラックの音が何とか聴こえる。日常の音がほぼ聴こえない。10分程度は耳を休ませるといった対表2 難聴の程度とデシベル表3 聴こえのセルフチェックMedical Trendメディカル・トレンド
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