Labo_No.560_re
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めに財産を還元するというのはどうでしょうか。これからは、お年寄りから若者までが国民的レベルで、どんな超高齢社会にしたいかをもっと議論する必要があると思います。――体の健康も気になりますが、今は認知症への関心度も高いですね。和田みなさんは認知症を怖がるけれど、認知症になったら、それで終わりではないんです。これは大事なポイントで、認知症は進行性の病気ですから、軽いうちは単なる日常の物忘れで、今日のランチに何を食べたか思い出せないといった些細なことです。その時点で知能はほとんど衰えていません。物忘れは多少あるけれど日常生活は何でもできるのです。認知症の中で多いのが、脳が縮むアルツハイマー型です。アメリカの元大統領のレーガン氏は、辞任して5年後にアルツハイマー型認知症であることを告白しました。回顧録によると、2期目の任期中には軽度のアルツハイマーで記憶障害があったようです。なぜこの話をするかというと、アルツハイマーでも大統領が務まるわけです。ですから、闇雲に恐れる必要はなく、軽いうちなら何でもできるので、できることは続けたほうがよくて、それが認知症を遅らせる口の3割を占める高齢者に対して、もっと目を向けるべきだと思います。――現在、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30パーセント。今後はさらに進んでいきますね。和田だから日本の経営者に挑戦してほしいのが、AIを活用した介護ロボットの分野です。僕がイメージしている「介護ロボット」は、掃除も洗濯も料理も入浴も全部してくれて、話し相手にもなってくれるもの。話し相手はすでに実用化されていますが、そんなロボットができれば人手不足は解消するし、老人がホームに入らなくても自宅で過ごすことが可能になります。2000万円くらいはするかもしれませんが、需要が広がればもっと安くなるでしょう。――お年寄りが元気になって、もっと消費すれば日本経済も活性化しますね。和田個人金融資産の6割は高齢者が保有しています。僕は相続税を100パーセントにしたらいいと思うのです。日本の産業も強くなるし、高齢者はもっとお金を使うようになり、いろいろな効果が期待できます。今、若い人が消費税で苦しんでいますから、“相続を諦めるから、若い人から消費税をとるな”というのが年寄りの矜持だと思っています。僕は子どもに財産を残すより名を残したほうがいいという考え方です。例えば、自分の出た小学校に自分の名前をつけた文庫をつくるために寄付するなど、家を守り続けるという考えをやめて、日本の未来のた和田現場で高齢者を診ている人が、政府6         の審議会やマスコミになかなか意見を届けることができないのが現状です。僕は、どうすれば高齢者が元気になるか、経験則とデータを使って提言するために、執筆活動をしているのです。――それで高齢者が元気に幸せに暮らせる社会を目指して政治団体・幸齢党を自ら結成されました。その党名には、高齢者が幸せな齢を重ねられるようにという思いが込められていますね。和田政党をつくったのは、日本の社会がお年寄りをダメな存在とみていることへの反論です。75歳くらいのお年寄りは結構元気なのに、後期高齢者として終わった人のように扱い、実際に制約もかけているのが現状です。何とか政策で高齢者を若返らせたいと、年齢差別禁止法の策定を訴えました。この法令はアメリカでは1967年、EUでは2000年からすでに発令されています。これは年齢による就職差別を主体としていて、歳をとっても賃金を下げられることなく能力に応じて働けるなど、差別することなく雇用を促進し、高齢者の社会参加につなげていくものです。今回の参議院選挙で、東京都32人の立候補者のうち、高齢者対策を打ち出している人が一人もいなかったのは驚きでした。人高齢者の幸せがライフワーク自ら「幸齢党」を結成認知症は今できることの継続で進行を遅らせることが可能2025.09 – LABO ■『幸齢党宣言』。高齢者の就職差別などを提言している7月の参議院選挙では、幸齢党の党首として精力的に街頭演説を行った

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