Labo_No.561
5/16

糖尿病からアルツハイマー病まで歯周病の影響は全身に波及歯周病の検査歯周ポケット測定やX線検査系の反応を引き起こすことで、関節リウマチの発症や進行に関与。まさに、「歯周病は万病の元」といえそうです。歯周病の検査は、病気の進行度や状態を正確に把握するために重要です。以下の項目を組み合わせて行うことが推奨されています(図表3)。 ■ 歯周組織検査歯肉の色、形態、出血の有無を観察し、歯肉の炎症の程度を評価します。 ■プロービングデプス(PD)歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の進行度を評価します(図表4)。歯肉辺縁(歯と歯茎の境目)から歯周ポケットの底までの深さを、目盛りのあるプローブ(探針)で測定します。歯周ポケットの最も深い部分に、プローブを歯の軸に沿って平行に、歯肉を傷つけないように挿入し、プローブの先端が到達した歯周ポケットの底から、歯肉辺縁までの距離を読み取ります。3ミリ以下が臨床的正常値で、4ミリ以上の場合に歯周病の可能性があると診断されます。 ■ブリーディング・オン・プロービング(BOP)プロービングデプス時に歯茎からの出血の有無を確認します。出血がみられるほかにも数十種類もの細菌が歯周病菌ではないかと考えられています。つまり、「歯周病菌」といっても歯周病5 菌は1種類ではなく、ほかの多くの感染症のように、特定の細菌やウイルスの感染によって起こるものではないのです。歯周病菌は、歯周病のおもな原因となる細菌群であり、共通する以下の特徴をもっています。①嫌気性環境で生息:酸素の少ない環境を好み、歯周ポケットなどで繁殖。②タンパク質分解能力:歯肉や歯槽骨などの組織を分解する酵素を分泌し、歯周組織を破壊。③免疫抑制作用:免疫系の働きを抑制する物質を産生、体の防御機能を弱める。④全身への影響:歯周組織から血流に乗って全身に広がり、心血管疾患や糖尿病の悪化、早産などのリスクを高める可能性がある。歯周病菌のもうひとつの大きな特徴は、口腔内の慢性的な炎症を引き起こすだけでなく、全身の健康にも深刻な影響を及ぼす点にあります。糖尿病、血管障害、周産期合併症、呼吸器疾患、関節リウマチ、腎臓病、非アルコール性脂肪性肝疾患、認知症、がん、骨粗しょう症、炎症性腸疾患など、歯周病と全身疾患との関連性が次々に報告されています。最新の研究では、次のような可能性が発表されています。①歯周病菌のひとつポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)がアルツハイマー型認知症の発症や進行に関与。②歯周病菌が血流に入り込み、免疫■ LABO – 2025.10Start ありアタッチメントロス(歯槽骨吸収)組織破壊の程度による歯周炎の分類軽度歯周病中等度歯周病炎症の程度による歯周炎の分類重度歯周病軽度歯周炎中等度歯周炎重度歯周炎なしなしあり歯肉の炎症健 全4mm未満のPDプラーク性歯肉炎図表 3 プラーク性歯肉炎・歯周炎の診断 BL:33%以上  or AL:5mm 以上PD:4mm 未満PD: 4〜6mm 未満PD: 6mm 以上歯面への細菌性プラークの付着ありBL:15%未満  or AL:3mm 未満BL:15〜33%未満or AL:3〜5mm 未満

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る