検査と病気の関係

検査項目の詳細

尿蛋白
  • 検査の目的

    液中にある蛋白質は、分子量が大きいため腎臓ではろ過されず、本来ならほんのわずかな量しか尿に含まれません。しかし、腎臓の機能が低下すると血液中の蛋白質の分子量の小さいのが尿のなかに漏れ出してしまいます。尿蛋白は、腎臓の状態を調べる検査で、尿に試験紙を入れて蛋白質の有無を調べます。この検査で異常が認められた場合、24時間分の尿を採取し、そのなかに含まれる蛋白質の量を調べる定量検査が行われます。

  • 基準値

    正常なときは陰性(-)。蛋白質が尿に出ている場合は陽性で、程度によって(+-)(+)(++)(+++)と変わります。 定量検査の場合は、1dLの尿のなかの蛋白質の量を測定します。その蛋白質が5~10㎎以下、また、1日に20~120㎎であれば問題ありません。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、膀胱炎、尿路結石、妊娠中毒症など。ただし、この検査ではほんの少量の蛋白質にも反応するため、激しい運動をしたときや、暑さ・寒さ、強いストレス、興奮、入浴後や生理の前後などに、腎臓に異常がなくても一時的に陽性と出ることがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    検査前は運動やストレスなどの影響が出ないよう、安静に。

尿糖
  • 検査の目的

    蛋白質と同様、糖分は尿のなかにほんのわずかしか含まれません。尿糖は、試験紙を用いて尿のなかの糖分を調べる検査で、糖尿病の有無を診断するのに有効です。
    ただ、この検査だけで糖尿病と確定できるわけではありません。陽性と出たら、血糖やブドウ糖負荷試験を受け、それらの検査を総合して糖尿病かどうかを診断します。尿糖が陽性で血糖値が高い場合はただちに糖尿病と診断されますが、血糖値が高くないのに尿糖が陽性になる場合(腎性尿糖)や、血糖値が高くても尿糖が陰性になる場合もあり、安易な自己判断は大変危険です。

  • 基準値

    尿糖が陰性(-)の場合は正常。陽性(+)の場合には再検査が必要です。ただ、ステロイド剤を服用している場合や、妊娠している場合などに、一時的に陽性になる場合もあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    腎性尿糖、糖尿病、下垂体疾患、副腎疾患、甲状腺疾患など。また、糖尿病で血糖コントロールがうまくいかない場合には、腎臓病との合併症が多く見られます。尿蛋白が出始めてから7~8年で腎不全になるケースも多くなっています。

  • 受診時または検査時の注意点

    尿糖は、食事の摂取によって数値が大きく異なります。検査当日の朝食は厳禁。前日も夕食は早めに終え飲酒は控えましょう。

尿沈渣
  • 検査の目的

    尿を遠心分離機にかけ、沈澱した赤血球や白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などの固形成分の量を種類を調べる検査で、尿蛋白や尿潜血などで陽性と出た場合に行われます。
    固形成分が正常値より多かったり、円柱細胞などが見つかった場合には、尿路や腎臓などの病気が疑われます。また、全身のさまざまな病気を診断するときの判断材料としても有効な検査です。異常値が出た場合には、さらに腎機能検査、尿路系のX線検査や画像検査(超音波検査やCT検査など)の二次検査が行われます。

  • 基準値

    一視野(顕微鏡で見たときに一度に見える範囲)内に、赤血球0~4個以下、白血球0~4個以下、その他の上皮細胞や結晶が少量程度なら正常です。なお、服用している薬剤や、運動・発熱などにより一時的に陽性になる場合もあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    赤血球が増加している場合には、腎炎、腎結石、腎腫瘍、心不全、動脈硬化、尿路系の炎症、尿路結石、尿路腫瘍、ネフローゼ症候群など。白血球が増加している場合には尿道炎、膀胱炎、腎炎など。円柱細胞が発見された場合には腎炎、ネフローゼ症候群、心不全、高血圧など。

  • 受診時または検査時の注意点

    体調を整え安静な状態で検査を。薬剤の服用も控え、発熱の場合は申し出て主治医の判断を仰いでください。

便潜血
  • 検査の目的

    いわゆる検便のことで、消化管の異常を調べる検査です。消化管で出血があると、便のなかに血液が混じって排泄されます。この検査では少量の出血でも異常を検出することができるため、特に大腸がんのスクリーニングに有効です。最近、増加の一途をたどっている大腸がんや直腸がんは、初期には自覚症状がはどんどないため、この検査が早期発見に大いに役立っています。
    潜血反応が陽性の場合には、どの部分からの出血かを調べるためにCT検査や内視鏡検査を行い、潰瘍やポリープやがんなど出血の原因・部位を調べます。

  • 基準値

    正常な場合は陰性(-)。陽性と出たら、消化管からの出血があることを意味します。
    最近は人の血液だけに反応する検査方法が用いられるようになり、食事や薬剤の影響はほとんどなくなっています。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    消化管のがん・ポリープ・潰瘍、食道静脈瘤、肝胆道系の疾患、膵臓など。なお、痔の場合も陽性と出ることがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    特別な食事制限や準備は必要ありませんが、暴飲・暴食を慎み、規則正しい食生活を心がけましょう。

赤血球 ヘマトクリット ヘモグロビン
  • 検査の目的

    赤血球は血液の主要な構成成分で、酸素を肺から各組織へ運ぶ働きを持っています。赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビンの3つの検査は、この血液中の赤血球の状態を調べるもので、貧血の診断のために行われます。3つの検査結果を総合し、赤血球の状態を判断します。
    ちなみに赤血球数は、血液中の赤血球の数を数えるもの。ヘマトクリットは、全血液中の赤血球の容積率、ヘモグロビンは全血液中のヘモグロビンの量を測るものです。なかでも重要なのがヘモグロビン。血液の赤い色はヘモグロビン(血色素)によるもので、赤血球の働きの中心となっています。ヘモグロビンが少ないと、酸素が各細胞の組織に十分供給されないため、赤血球数が正常でも貧血症状を起こす場合があります(鉄欠乏性貧血)。

  • 基準値

    検査施設によっても異なりますが、赤血球数は、男性ではμLのなかに420~570万個、女性では380~500万個。ヘマトクリットは男性では40~52%、女性では33~45%。ヘモグロビンは男性が1dLのなかに13.5~18g、女性では11.5~16g程度です。超高齢者(80歳以上)の場合は若干数値を低めに見積もるほうがいいでしょう。ちなみにヘモグロビンとヘマトクリットは平行して変動します。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値よりも低い場合は貧血、高い場合は多血症(赤血球増多症)が考えられます。頭痛やのぼせ、集中力の低下、赤ら顔などの症状が見られる場合は、多血症の疑いがありあます。症状が進むと、血栓による疾病(脳血栓、心筋梗塞など)を起こしやすい状態になるので注意が必要です。なお、赤血球が増える場合には、絶対的な多血症と、検査上数値が高くなる見かけ上の赤血球増多症の場合があります。絶対的多血症は病気治療の対象となります。見かけ上の場合は、血液が濃縮されることによって起こります。例えば暑い場所で運動するなどして脱水状態を起こし、血液の濃度が上がる場合。また、中高年の男性によく見られる例ですが、太り気味で血圧が高く、仕事もオフもバリバリといった人の場合にも、ストレスにより血液が濃縮されて粘稠度が高まり、血栓ができやすい状態になる場合があります。

  • 受診時または検査時の注意点

    これらの検査は、そのときの血液の状態を表わすもので、いつも同じ検査値になるとは限りません。目安として、基準値から1割以上数値が上下している場合は、異常と考えたほうがいいでしょう。また、この3つの検査値だけでなく、他の血液学的検査も参照し、総合的に異常があるかないかを判断することが重要です。
    検査の際には、最低1時間前には食事を終わらせておくこと。それも、軽めで脂っこいものは避けるようにしましょう。また、運動直後の検査は厳禁です。検査の前1時間以上は安静に過ごし、常に一定の時間、同じ条件下で検査を受けることを心がけましょう。

赤血球沈降速度(赤沈)
  • 検査の目的

    赤血球が試薬内を沈んでいく(赤沈)速さを見る検査です。例えば、熱が出た時に風邪以外にさまざまな疾患が考えられるように、赤沈の速度が基準値をはずれるのは、体のなかで何らかの異常が起きていることを示します。この検査は、結核などの感染症や、さまざまな疾患の状態を把握する目的で行われます。赤沈速度が速くなる場合、2つの原因が考えられます。1つには赤血球が減っている状態。もう1つは、血漿成分であるアルブミンが減ったりガンマグロブリン、フィブリノゲン(疑固因子)という蛋白が増えている場合。こうした場合には、結核などの感染症のほか、さまざまな疾患が考えられます。逆に、赤沈速度が異常に遅くなる場合には、多血症や凝固に異常があると考えられます。

  • 基準値

    男性で1時間に2~10mm、女性では3~15mmが基準。最低値は特に定められてはいませんが、極端に数値が低い場合(1時間に1~2mmなど)には多血症やフィブリノゲンの低下が考えられます。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値を超えた場合(赤沈速度が速い場合)には、結核などの感染症、リウマチ・膠原病などの慢性の炎症、貧血、白血病、悪性腫瘍、肝疾患などの存在が考えられます。逆に数値が低い場合には、多血症などが考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    赤沈は、一般の血液学的検査の血液とは別に新たに採血して検査を行います。検査の際には他の血液学的検査と同様1時間以上は安静に過ごした後に採血を。

白血球数
  • 検査の目的

    血液中の白血球数を見る検査です。白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解したり、免疫の働きをしています。つまり白血球が増加したり、減少したりするということは、身体のどこかに細菌などが入り込んだり、炎症を起こしたりしていることを示しています。

  • 基準値

    白血球数は個人差が大きく、また同じ人でも朝は少なく、夜になれば増加するという具合に、1日のうちの時間帯によっても変化します。そのため多少の変動はあまり気にする必要はありません。
    基準となるのは、男女ともに、1立方ミリメートルのなかに4000~9000個。また上下1割程度は許容範囲と考えていいでしょう。ただ基準値内でも、同じような状態で検査をして、以前の検査値と大きく変動した場合は注意が必要です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値を超えた場合には偏桃炎、肺炎、急性中垂炎などの急性感染症、白血病などの血液疾患が考えられます。特に恐ろしいのが白血病で、白血球数が10万個以上になることも珍しくありません。
    逆に数値が低い場合には、膠原病、再生不良性貧血、悪性貧血、敗血症やウイルス感染などが考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    前述したように、白血球数はちょっとした条件の違いで大きく数値が異なります。できれば午前中に検査することが望ましいでしょう。また、運動やストレスによっても白血球数は増えるので、心身共に安静にし、落ち着いた状態で検査を受けてください。

末梢血液像
  • 検査の目的

    白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5種類があり、それぞれが独自の働きをしています。末梢血液像は、白血球の種類や赤血球の形、血小板の形などを染色した血液標本を顕微鏡で調べる検査です。白血球を分類し、この五種類の細胞のバランスが崩れていないかを調べるのが主体ですが、同時に形に他の血球についても異常のある細胞がないかもチェックします。

  • 基準値

    5種類の白血球は好中球が45~65%、好酸球3~5%、好塩基球0~2%、単球3~8%、リンパ球30~40%という割合を占めています。このバランスが崩れていれば、注意が必要です。また、形や色に異常がある場合も確認できます。例えば鉄欠乏性貧血の場合、ヘモグロビンが少ないため染色しても赤血球の色が薄くなりますし、貧血の種類によって赤血球が大きくなったり小さくなったりします。若い細胞が増えているとか、形に異常があるなどの場合もこの検査で調べることができます。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    5種類のうち、特に好中球の割合が極端に減った場合は、抵抗力の低下を示し重症の感染症にかかる危険性があります。また形に異常のある細胞は白血病などの疑いが大きくなります。

  • 受診時または検査時の注意点

    白血球数の検査同様、心身共に安静にし、落ち着いた状態で受診を。

血小板数
  • 検査の目的

    血小板は、主に出血した時に血液を固めて、出血を止める働きをしています。ケガなどで出血すると、血小板は傷口に集まって血小板同士がくっつくことにより血栓を作ります。血小板数を調べるこの検査は、出血しやすさと止血機能を見る目的で行われます。

  • 基準値

    血小板は1立方ミリメートル中に、13~37万個。基準値には大きな幅がありますし、個人差もありますので、上下1割前後は許容範囲と考えていいでしょう。ただ、一人のなかでの数値の変化は少ないので、大きな変動は要注意です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    一般に1立方ミリメートルのうち、血小板数が5万個以下になると、血が止まりにくくなり、2万個以下だと自然に鼻や歯ぐきからの出血が起こりやすくなったり、皮下に紫斑と呼ばれるアザが出やすくなったりします。疾患としては血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血、急性白血病、肝硬変などが考えられます。また、本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病や真性多血症では、血小板数が増加しますが、この場合には止血機能が低下したり、血栓が起こりやすかったりします。

  • 受診時または検査時の注意点

    一定の条件のもとで、定期的な検査を。個人データを蓄積して、変動があった場合には基準値内でも専門医の診断を仰いでください。

APTT PTT
  • 検査の目的

    血漿中の血液凝固因子は、血小板と協力して血栓を強固にする働きをしています。この検査は血漿が固まるまでの時間を測ることにより、血液凝固機能を調べます。以前はPTT(部分トロンボプラスチン時間)を用いていましたが、凝固までの時間がかかること、検査値のばらつきが大きいことから、現在では短時間で、測定値のばらつきの少ないAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が主流となっています。

  • 基準値

    試薬によってもことなりますが、APTTの場合、凝固までの時間が30~40秒が基準。また同時に活性値も出すことができ、正常を100%とした場合、80~130%が基準です。なおPTTでは、50~100秒くらいです。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    凝固までの時間が長い場合は血友病が考えられ、もともとはそれが主な検査の目的でした。それ以外の疾患としては、抗リン脂質抗体症候群があります。これは若い女性に多い病気で、原因不明の習慣流産や胎児の死亡などの症状が現われる場合があります。いずれにせよ出血しやすい傾向、血栓ができやすい傾向などを知ることができます。また、肝硬変や種々の凝固異常症で異常値を示します。

  • 受診時または検査時の注意点

    血液凝固検査は、出血傾向のある人で、血小板に異常がない場合に行われます。採血は空腹時が望ましく、特に油物の摂取は避ける必要があります。

梅毒脂質抗原使用検査
  • 検査の目的

    梅毒に感染しているかどうかを診断する検査です。検査はカルジオリビンという抗原を利用する方法と、梅毒病原体を用いる方法に大別できます。それぞれの検査方法のなかに、さらに細かい検査方法があります。
    現在では、この2種類の検査を行い、両方が陽性であれば梅毒、いずれか片方のみ陽性の場合は、陰性を示した方法のなかの別の検査法、さらに蛍光顕微鏡を使用するFTA-ABS法という検査方法で検査し、確認する方法がとられています。

  • 基準値

    正常は陰性(-)。ただ、感染直後の場合には陰性を示す場合があります。複数の検査結果のうちどちらかが陽性の場合は、感性初期もしくは治療後、さらに感染していない場合があります。いずれの場合も再検査が必要です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    梅毒。ただしいったん陽性になると、治療しても血清反応がもとに戻らず、一生涯陽性を示すこともあります。また、梅毒に感染していなくても、細菌性感染症、ウイルス感染症や膠原病、抗リン脂質抗体症候群などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    検査は早朝空腹時に行うのが原則。梅毒は治療すれば治癒する感染症であり、偽陽性の可能性もあるので、悲観せず主治医の指示に従いましょう。

CRP
  • 検査の目的

    体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合、血液中に蛋白質の一種であるC-リアクディブ・プロテイン=CRPが現われます。このCRPは、正常な血液のなかにはごく微量にしか見られないため、炎症の有無を診断するのにこの検査が行われます。
    同じく炎症があることを示すものに赤血球沈降速度(赤沈)がありますが、CRPは赤沈よりも反応が速く、また消失も速いため、急性炎症の場合、炎症の強さと長さを判断するのに最も鋭敏な指標となっています。

  • 基準値

    定量法(一定の量のなかに含まれる量を調べる方法)で判断するのが一般的になっています。この場合1dLの血液のなかにCRPが0.3㎎グラム以下であれば正常と考えられます。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    陽性反応が強い場合は、結核などの感染症、膠原病、リウマチ熱、心筋梗塞、肝硬変、敗血症、悪性腫瘍など。弱陽性の場合もウイルス性疾患、急性肝炎、脳炎、内分泌疾患などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    CRPに異常がある場合の多くは、発熱や不快感をともなっています。検査は基本的に早朝空腹時に行われます。

RF(リウマトイド因子)
  • 検査の目的

    通常の血液中には存在しないリウマチ因子(RF=抗体)の有無を調べる検査で、慢性関節リウマチ(RA)の疑いがあるときに行われます。
    強陽性の場合は慢性関節リウマチ、または悪性関節リウマチであることが多いのですが、RF(リウマトイド因子)検査だけでリウマチと決めつけることはできません。同時に関節炎や朝のこわばりなどの症状があるかどうかを確認し、症状がある場合はCRP、赤沈など炎症の存在を示す検査を行い、結果を総合して診断します。

  • 基準値

    正常は陰性(-)。RFが作られている場合は陽性を示します。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    慢性関節リウマチが代表的な疾患ですが、リウマチ以外の膠原病(全身エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、シェグレン症候群など)、結核などの慢性感染症、慢性肝炎、肝硬変、糖尿病、腫瘍性疾患などでも陽性を示すことがあります。これらの意味は不明ですが、何らかの免疫異常が起きていると考えられます。また、健康な人でも陽性を示す場合もあり、特に高齢者では割合が高くなります。強陽性の場合はRAである可能性が高くなります。

  • 受診時または検査時の注意点

    前述のように、RF(リウマトイド因子)検査だけでリウマチとは診断できません。リラックスして検査を受けると同時に、自分の症状を正確に主治医に伝えることが大切です。

HBs抗原
  • 検査の目的

    肝機能障害が疑われた場合、肝炎ウイルスの有無とタイプを調べることが重要になってきます。肝臓病の8割以上が肝炎ウイルスの感染によって引き起こされていますが、ウイルスのタイプにより、病気の進行の仕方や治療法も異なります。HBs抗原は、B型肝炎ウイルス検査(HBV)のなかの1つで、この抗原があればB型肝炎ウイルスによる感染状態であることを示します。また、肝炎が治癒するとこの抗原はなくなり、かわりにHBs抗体ができます。このように、HBs抗原だけでなく、それぞれの抗原、抗体の有無を調べることで、病気の状態を把握することができます。B型肝炎同様、A型肝炎ウイルス検査(HAV)、C型肝炎ウイルス検査(HCV)もあります。

  • 基準値

    正常は陰性(-)。陽性の場合はB型肝炎ウイルスの感染状態です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    B型肝炎。最初は急性肝炎として発症し多くは治癒しますが、一部は劇症肝炎として重症化したり慢性肝炎に移行したりします。慢性肝炎が長期化すると、肝硬変に移行したり肝がんを発症する場合もあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    肝臓の異常には自覚症状がほとんどありません。検査に異常があっても軽視してしまいがちですが、異常があった場合はすみやかに専門医の診断を仰ぎましょう。

AST
  • 検査の目的

    AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は酵素の一種で、心臓の筋肉や骨格筋、肝臓に多く含まれています。心臓や肝臓などの臓器に何らかの障害があると、血液中にASTが漏れ出してきます。ASTは、血液中のASTの量により、主に肝臓や心臓にどの程度の障害が起きているかを知ることができます。ASTの数値が高い場合、ALTや総ビリルビンなど、他の検査値も考慮して判断します。

  • 基準値

    1Lの血液のなかに10~40単位が基準。それより多い場合は異常。なお激しい運動の後などに、一過性の上昇が見られる場合もあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合、心臓・肝臓の異常が考えられます。ALT数値も高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がん、脂肪肝など。特に急性肝炎では2000~3000単位といった高い検査値になることもあります。ALTが正常に近い場合は、心臓の異常、例えば心筋梗塞などが疑われます。

  • 受診時または検査時の注意点

    肝臓は容量の大きい臓器で、同時に回復力の高い内臓です。したがって検査値で異常が見られるということは、肝臓が体を支えきれなくなった証拠。痛みなどの自覚症状はまずないので、定期的に検査を受け、自分の基準値を把握しておきましょう。

ALT
  • 検査の目的

    ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、前ページのAST同様酵素の一種です。ASTが心臓の筋肉や骨格筋、肝臓に多く含まれているのに対し、ALTは肝臓に一番多く含まれており、肝臓に何らかの異常があって細胞が壊れすぎていると、血液中にALTが漏れ出してきます。したがってALTで異常が認められた場合は、まず肝臓に問題があると考えられます。この場合もASTや総ビリルビン、アルカリフォスファターゼなど、他の検査値も考慮して診断します。

  • 基準値

    AST同様、1Lの血液のなかに5~40単位が基準。それより多い場合は異常です。激しい運動のあとなどに上昇する場合もありますが、しばらく安静にしていれば元に戻ります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    ALTは、AST以上に肝臓の異常に敏感です。基準値より高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、肝硬変、脂肪肝などの疑いがあります。特に急性肝炎では、AST同様2000~3000単位といった高い検査値になることもあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    ALTの異常は、無理な身体の使い方やアルコールのとりすぎの現れともいえます。検査をいい機会に、日頃不摂生をしていないかどうか、自分の生活を振り返ってみましょう。

γ-GT
  • 検査の目的

    γ-GT(ガンマ・グルタミール・トランスペプチターゼ)も、腎臓や肝臓に多く存在する酵素です。この酵素はアルコールに敏感に反応するため、アルコール性の肝機能障害の判定に重要視されています。
    アルコール性肝障害にはいくつかの種類があります。アルコールを大量に飲むことで、肝臓の機能が低下して中性脂肪が蓄積される脂肪肝。一度に大量のアルコールを飲んで、重い急性肝炎を起こしたものがアルコール性肝炎。長期間アルコールをとり続けることによって起こるのがアルコール性肝硬変です。こうした疾患では、γ-GTに異常が高頻度に見られます。

  • 基準値

    男性の場合、1Lのなかに70単位以下、女性の場合30単位以下。アルコールを常飲している人の場合は比較的高めの数値になりやすく、前日の飲酒の影響で数値が高くなる場合もあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変、肝がん、胆道系の病気、膵臓がんなど。ほかの肝機能検査で異常がなく、γ-GTだけ数値が高い場合は、明らかにアルコールが原因です。逆に、飲酒歴や薬の服用がない人の場合、アルコールをやめて2~3週間後に再検査し、そのときに異常値が出た場合は、肝硬変や肝がん、胆道系の病気などが疑われます。

  • 受診時または検査時の注意点

    γ-GTに異常があるのはアルコールが原因のことが多いので、日常生活を振り返ってみましょう。前日飲酒した場合(もちろん検査前の飲酒・食事には十分注意が必要ですが)などはその旨正直に申し出を。

血清ビリルビン
  • 検査の目的

    血清ビリルビンは、黄疸の原因や種類を見分けるのに有効です。
    血液中の赤血球の寿命が尽きたとき、それをもとに作られる黄色い色素がビリルビンで、胆汁色素と呼ばれ、油を消化しやすくする胆汁の主成分となっています。

  • 基準値

    1dLの血液のなかに0.3~1.2㎎が基準。それより多い場合は異常。3㎎を超えると明らかに皮膚(顔色など)が黄色くなり、10㎎以上では黒ずんでくることもあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    黄疸が見られる=血液中のビリルビンが基準値より高い場合、ほとんどが肝臓の病気で、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどが疑われます。この場合、ALT、ASTの数値にも異常が見られるはずです。ALT、ASTの数値にあまり変化が現れない場合は、胆汁の通り道である胆管のどこかに異常がある場合(胆石症、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がんなど)や、血液の病気の場合(溶血性黄疸など)が考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    血清ビリルビンは黄疸と密接な関係があり、日頃から顔色や白目の色をチェックし、「黄色っぽい」と感じたらすぐに検査することをおすすめします。

アルカリフォスファターゼ
  • 検査の目的

    肝臓や、肝汁の通り道である胆道の異常の原因や種類を見分けるのに有効です。アルカリフォスファターゼ(ALP)はリン酸化合物を分解する働きを持つ酵素で、肝臓や小腸、腎臓、骨などの多くの臓器や器官に存在しています。これらの組織に異常があるとALPが血液のなかに漏れ出てくるわけです。
    この場合も、AST、ALTをはじめ、他の肝機能検査の結果をもとに、肝臓に異常があるか、それとも胆道に異常があるのかを診断します。また、ALPの分布を調べて、どこに異常があるかを調べる検査もあり、ALPのアイソザイムと呼ばれます。

  • 基準値

    1Lの血液のなかに115~359単位が基準。成長期の子どもや妊娠後期、食事や薬物などの影響で数値が高くなる場合もあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合には、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどの肝臓系の病気や、胆道疾患(閉塞性黄疸、胆石症、胆道がんなど)、さらに骨腫瘍、くる病、骨軟化症、潰瘍性大腸炎、甲状腺機能亢進症、尿毒症などの疑いがあります。また、低い場合には前立腺肥大、甲状腺機能低下症などの場合があります。

  • 受診時または検査時の注意点

    アルカリフォスファターゼにはさまざまな方法があり、施設によって基準値も大きく変わります。同じ施設で定期的に検査を受けることにより、自分なりの基準値を把握してください。

LD
  • 検査の目的

    LD(乳酸脱水素酵素)は、体内のブドウ糖がエネルギーに変わるときに働く酵素で、肝臓、心臓、血液、骨格筋などに多く含まれています。これらの組織に異常がある場合、血液中のLDの濃度が濃くなります。
    LDは身体の広い範囲に存在しているため、基準値より多いときには、何らかの疾患が起きている可能性がありますが、どこに異常があるのかを特定することが必要です。そのため肝臓の異常の場合は、AST、ALTをはじめ他の肝機能検査の結果をもとに診断します。また、LDの種類と量を調べるLDのアイソザイムと呼ばれる検査もあり、それによって異常箇所を特定することができます。

  • 基準値

    1Lの血液のなかに115~245単位が基準。激しい運動や妊娠によっても数値が高くなる場合があります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合には、心筋梗塞、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がん、骨髄性白血病、悪性腫瘍、腎臓疾患、筋ジストロフィー、容血性貧血などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    LDに異常があるだけでは、身体のどこに異常があるか判断できません。他の検査結果や黄疸の有無などを総合して判断しますが、自分でも身体のなかの声(症状)に耳を傾けてみてください。

総蛋白
  • 検査の目的

    蛋白質は、肉や魚、卵、牛乳、豆類などさまざまな食品に含まれています。食事からとった蛋白質は消化管で分解され、20種類以上のアミノ酸となって肝臓に運ばれます。肝臓では、これらのアミノ酸を人間の体に合った形に作り変えています。
    血液中の蛋白質は100種類以上ありますが、主にアルブミンとグロブリンに大別できます。アルブミンは、血液中の水分を一定に保つ働きをしており、グロブリンは抗体を作るなど、免疫機能の主力を務めています。
    血液中の蛋白質の量に異常があることは、肝臓における蛋白質の製造機能に異常があるか、もしくは腎臓機能が低下して尿中に蛋白質が漏れ出していると考えられます。いずれの場合も、他の肝機能検査や尿蛋白の結果などを合わせ、総合的に診断します。

  • 基準値

    1dLの血液のなかに6.7~8.3gが基準。アルブミンの量では1dLのなかに4.0~5.0g程度です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合には、慢性肝炎、肝硬変、膠原病、多発性骨髄腫、高蛋白血症など。低い場合は重症の肝障害、肝硬変、ネフローゼ症候群、栄養不良、消化吸収障害などが考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    蛋白質量は、多すぎても少なすぎても問題です。この機会に自分の食生活を見直してみましょう。

中性脂肪
  • 検査の目的

    中性脂肪は、エネルギー源であるブドウ糖が不足した場合、それを補うためのエネルギー源です。体内に取り込んだエネルギーが余った場合、肝臓で中性脂肪が合成され、皮下脂肪として蓄えられます。
    このように中性脂肪は人間の体になくてはならないものですが、肝臓で増えすぎれば脂肪肝に、皮下組織で増えすぎれば肥満につながります。中性脂肪の量を調べることは、さまざまな病気の温床を断つことにつながるのです。

  • 基準値

    正常な場合は1dLの血液のなかに50~149㎎。家族に太っている人が多いなどの体質的な条件もありますが、一般に太っている人は高めの数値になります。また、食事のとり方も検査値に大きく影響します。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合は高脂血症、糖尿病、ネフローゼ症候群、膵炎、甲状腺機能低下症など。低い場合は、肝臓病、甲状腺機能亢進症、アジソン病、副腎機能不全などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    中性脂肪の検査は、空腹時に行うのが基本です。中性脂肪の増加は、食べすぎやカロリーのとりすぎが原因になることが多いようです。直接病気につながるわけではありませんが、動脈硬化をはじめ危険な病気の原因になりかねません。検査で高い数値が出た場合は体重を落とすこと、摂取カロリーを減らすこと、適度な運動をすることを心がけましょう。

総コレステロール
  • 検査の目的

    総コレステロールは、血液中の重要な脂肪です。主な働きは細胞膜や血管壁を構成する、副腎皮質ホルモンや性ホルモンを合成する材料になる、食物の消化・吸収に欠かせない胆汁酸の原料になるなどがあります。
    このように重要な役割を果たしているコレステロールですが、多すぎても少なすぎても体内に悪い影響を与えます。診断はコレステロールの量だけでなく、前ページの中性脂肪、次項のHDL-コレステロールの数値も参考にして行われます。

  • 基準値

    基準値は1dLの血液のなかに150~219㎎。近年食生活の欧米化が進み、心臓病が増えていることもあり、200㎎以下が望ましいとされるようになってきました。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合は高脂血症、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、動脈硬化など。低い場合には肝臓の異常が考えられ、肝硬変、劇症肝炎、甲状腺機能亢進症などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    高脂血症は、すぐに命に関わる病気ではないため、検査の結果が悪くても放っておきがちですが、そのまま放置しておくと将来、大変な病気を引き起こす可能性が大きくなってしまいます。異常置が出た場合には、日常生活の見直しや適切な治療が必要です。

HDL-コレステロール
  • 検査の目的

    脂質であるコレステロールはそのままでは血液に溶けないため、特殊な蛋白質がくっついた「リポ蛋白」という形で体内を巡っています。
    このリポ蛋白にはいくつかの種類がありますが、そのうちHDL-コレステロールは、血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割をしています。いわば血液中のコレステロールが増えるのを防いでいるわけで、「善玉コレステロール」と呼ばれています。
    一方、コレステロールを細胞に届けているのがLDL-コレステロールです。細胞に必要以上にコレステロールが増えてしまうと、血管を硬化させ動脈硬化を促進します。このため「善玉」に対しLDLは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

  • 基準値

    基準値は男性の場合、1dLの血液のなかに40~86㎎。女性の場合、40~96㎎。「悪玉」であるLDLは70~139㎎が基準となっています。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    HDLが基準値より低い場合は、動脈硬化、高脂血症、虚血性心疾患などへの危険があります。

  • 受診時または検査時の注意点

    HDLとLDLのバランスが重要です。コレステロール値が高めでもHDL値が高く、LDL値が低めなら問題がありません。逆の場合は、将来狭心症や心筋梗塞などの病気を招く危険性が高いので注意しましょう。

尿素窒素
  • 検査の目的

    腎臓が十分働いているかどうかを調べる検査です。尿素窒素とは、血液のなかの尿素に含まれる窒素成分のことで、蛋白質が利用されたあとにできる残りかすです。通常は腎臓でろ過されて尿中へ排出されますが、腎臓の働きが低下すると、ろ過しきれない分が血液のなかに残ります。つまり、尿素窒素の数値が高くなるほど、腎臓の機能が低下していることを表しています。腎臓の機能を見る場合には、この尿素窒素の値だけでなく、尿に蛋白が出ているかどうかの検査の結果もあわせて判断します。両方に異常が見られる場合は要注意です。

  • 基準値

    1dLの血液のなかに7~23㎎程度が正常。ただし、高蛋白食を多くとったり、妊娠、運動などの生理的な影響によっても数値が変動します。また、年齢や性別によっても差があり、男性のほうがやや高めで、年齢とともに増加する傾向があります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合は、腎炎などの腎機能障害、尿毒症、腎血流量の減少、消化管出血など。低い場合には肝硬変、重症の肝不全、妊娠、慢性の低栄養状態などが考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    腎臓も肝臓と同じように異常があっても自覚症状はほとんどありません。検査値に異常があれば食生活の見直しなどを心がけましょう。

尿酸
  • 検査の目的

    尿酸は細胞の核の成分であるプリン体が分解されてできる老廃物です。プリン体は肉や肉汁、干物、豆類などの食品に多く含まれています。細胞は常に新陳代謝をくり返していますから、尿酸も常に作り出されており、血液に混じって全身を回ったあと、腎臓で尿や便に混じって排出されます。したがって、血液のなかには一定量の尿酸が含まれていますが、この尿酸の量が増えすぎてしまうと、余分な尿酸が体内の特定の場所(主に足の親指の付け根)に溜まって結晶化し、痛風のもととなります。
    尿酸が増える原因としては、プリン体の材料となる食べ物をとりすぎている場合、もしくは腎臓の機能が低下している場合が考えられます。尿素窒素、尿蛋白などの検査の結果をもとに、原因を判定します。

  • 基準値

    学会では、1dLの血液のなかに男性3.7~7.0㎎、女性2.5~7.0㎎を基準値としています。一般に男性のほうが女性よりも高い傾向にあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合は、一般に痛風を考えますが、ほかに白血病、多発性骨髄腫、妊娠中毒症、腎炎、尿毒症など。なかでも痛風は、俗に風が吹くくらいのわずかな振動でも痛みを感じることから名付けられたといわれ、足の親指のつけ根や関節などに症状が現れます。また、症状が出ない場合は高尿酸血症と呼ばれますが、さまざまな合併症を起こす危険性があります。

  • 受診時または検査時の注意点

    昔、痛風はいわゆる「ぜいたく病」といわれていましたが、現在ではたくさんの人がこの病気にかかっています。まずは食生活の改善を。

アミラーゼ
  • 検査の目的

    アミラーゼはでんぷん(糖質)を分解して糖にする酵素で、主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されます。この酵素は血液に混じった状態で全身を回ったあと、腎臓でろ過され、尿に排泄されます。
    血液中、尿中のアミラーゼが増加した場合は、膵臓、睡液腺の細胞に異常があることを示しています。特に膵臓に炎症がある場合や膵管の通りが悪くなった場合に高い数値を示すため、膵炎や膵臓の腫瘍マーカー(病気の場合や程度を特定する検査)として有効です。
    アミラーゼ値に異常がある場合は、背中に痛みがないかどうか確認することと、超音波検査やCT検査を行い、膵管が太くなっていないかどうかや膵臓の形に変化がないかどうかを調べます。

  • 基準値

    血液中のアミラーゼは、1Lのなかに37~125単位が基準値。尿の場合は380単位が正常です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合、急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢腫、耳下腺炎、慢性腎不全など。慢性膵炎の末期には基準値より低い数値を示します。

  • 受診時または検査時の注意点

    膵臓は胃の裏側にある臓器で、しかも自覚症状が少なく、がんの早期発見が難しい臓器です。近年発症率が高まっていますので、検査値に注意すると同時に背中の痛み、黄疸、体重減少などの小さな変化を見逃さないようにしましょう。

血糖
  • 検査の目的

    糖尿病の診断に欠かせない検査です。糖尿病は、血液のなかのブドウ糖(血糖)が異常に増えている状態をいいます。その原因となっているのは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの不足です。
    インスリンは血液のなかのブドウ糖をエネルギーに変え、肝臓や筋肉の細胞に糖分を送る働きをしています。このインスリンが不足すると、血液のなかのブドウ糖が使われないまま血液内にあふれ、高血糖の状態になり、尿に糖があふれてきます。
    なお、体の大部分は蛋白質や脂肪もエネルギー源になりますが、脳のエネルギー源になるのはブドウ糖だけです、したがって、インスリンの不足や、逆にインスリンの治療中の人でインスリンが効きすぎることにより脳細胞にブドウ糖が行き渡らないと、脳の働きが低下し、昏睡状態になることもあります。血糖異常にはこのほかにもさまざまな合併症の危険性があるので、早期発見・治療が不可欠です。

  • 基準値

    基準は1dLのなかに70~109㎎。それを超える場合は詳しい検査を受ける必要があります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合、ほとんどが糖尿病で、ほかに急性膵炎、膵がん、甲状腺機能亢進症など。低い場合はインスリノーマ、副腎皮質機能低下症などが考えられます。

  • 受診時または検査時の注意点

    血糖値は食事の影響を受けますので、空腹時に測るのが原則です。また、身内に糖尿病の人がいる場合、糖尿病になりやすいので、危険性を認識しておきましょう。

グリコヘモグロビン
  • 検査の目的

    グリコヘモグロビンとは、血色素であるヘモグロビンに、ブドウ糖(グリコース)が結合したものをいいます。このグリコヘモグロビンが、ヘモグロビンのなかにどれくらい含まれているかを調べるのがこの検査です。血糖値が高い場合、グリコヘモグロビンも次第に増えてきます。ただ、血糖値がその日、そのときの血糖の状態を示す値であるのに対し、グリコヘモグロビンは寿命が約120日と長いため、長期間の血糖の状態を知ることができます。
    血糖値が高い場合、それが一過性のものかどうかを確認したり、糖尿病で血糖のコントロールがうまくいっているかどうかを見るときに有効な検査です。

  • 基準値

    総ヘモグロビンのなかのグリコヘモグロビンの割合が4~6%なら正常。8%以内ならやや不良、10%以上は要注意です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    血糖値と同様に基準値より高い場合、主に糖尿病、他に急性膵炎、膵がん、甲状腺機能亢進症などによる二次性の糖尿病。低い場合はインスリンノーマ、副腎皮質機能低下症など。

  • 受診時または検査時の注意点

    グリコヘモグロビンは、2~3ヵ月前からの血糖の状態を知ることができるため、検査前だけ摂生してもすぐにばれてしまいます。日頃の生活で悪いところを見直し、改善していくことが糖尿病予防や治療につながると認識しましょう。

CK(CPK)
  • 検査の目的

    CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)は心臓をはじめ骨格筋、平滑筋など筋肉のなかにある酵素です。これらの細胞に異常があると、CPKが血液中に流れ出すため、高い数値を示します。
    CPK値に異常がある場合は、心筋梗塞などが疑われ、痛みの有無や心電図検査を総合して診断します。また、特に高い数値を示す場合にはアイソザイム検査を行い、異常箇所を確定することが不可欠です。

  • 基準値

    男性の場合、1Lの血液のなかに40~250単位、女性の場合30~200単位が基準です。疾患がある場合は1000単位以上の数値が見られることもあります。また、運動などにより多少数値が高くなることもあります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合、急性心筋梗塞、心筋炎、進行性筋ジストロフィー、萎縮性筋硬直症、多発性筋炎、甲状腺機能低下症、悪性腫瘍など。低い場合は、妊娠などの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    CPK値が高い場合は、心筋梗塞など深刻な疾患の場合があるので、早急に主治医の指示を仰ぐことが大切です。また、心筋梗塞の半分は何の前ぶれもなく突然起こりますが、以前に狭心症の発作を起こしたり、動脈硬化の疑いがある場合は、心筋梗塞を起こす危険性が高いので日頃から十分な注意を。

CEA
  • 検査の目的

    CEAはがんの存在を示唆する腫瘍マーカーの1つです。がんが発生すると、特殊な蛋白質、酵素、ホルモンなどを作り出します。CEAは胎児の早期の受精卵細胞と共通する物質で、この数値が高くなる場合、大腸がん、肺がんなどの消化器系のがんの可能性が考えられます。
    ただ、個人差が大きく、すべてのがん患者で異常が見つかるわけではありません。
    早期発見には不向きですが、病気の進行の程度によって数値が上がるので、がんの経過を見る場合や再発、転移の可能性を見る場合などに有効な検査です。

  • 基準値

    基準は1mLの血液のなかに5ng以下。なお、多量喫煙者では比較的数値が高くなる場合があります。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    異常値を示す場合、悪性腫瘍(膵がん、大腸がん、胃がん、胆道がん、原発性肝がん、転移性肝がん、食道がん、肺がん、乳がん、甲状腺がんなど)を疑い、他に、肝硬変、肝炎、膵炎、甲状腺機能低下症などでも上がることがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    がんの検査技術は年々進歩しており、早期の段階で発見できれば治癒も不可能ではありません。毎年、定期的に健診を受け、その際、CEAも受けて変化がないかどうかのチェックをしましょう。
    タバコを吸っている人でCEAの値が高い場合は、1~2ヵ月禁煙して、値が下がるかどうかを見る必要があります。また、測定方法によっても値が違いますので注意しましょう。

AFP
  • 検査の目的

    CEAと同じくAFP(α-フェトプロテイン)もがんの存在を示唆する腫瘍マーカーの1つです。CEAが消化器系のがんに有効なのに対し、AFPは肝臓のがんに有効です。
     AFPも胎児の血液中にある蛋白質で、普通の人の血液中にはほとんど見られません。この数値が高くなった場合、肝硬変でがんの合併が考えられる場合の早期発見や、経過や予後の推定に役立つことが確認されています。診断の際には他の肝機能検査の数値も考慮し、総合的な判断が行われます。

  • 基準値

    基準は1mLの血液のなかに10ng以下です。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    著しい増加を示す場合、原発性肝がん、まれに転移性肝がんなど。低~中程度の増加の場合は原発性肝がん、肝硬変、慢性肝炎、急性肝炎、劇症肝炎(回復期)、妊娠後期、転移性肝がんなどの疑いがあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    健康診断でがんが発見されるケースは年々増えています。女性で30歳、男性で40歳になったら、必ず定期的にがん検診を。総合健診を受ければほとんどのがんの検査をしますので、男女とも30歳になったら定期的に総合健診を受けるのが最もよい方法です。また、がんの発生は、喫煙や食生活などの生活習慣とも無関係ではありません。自分の健康は自分で守ると認識し、日頃から摂生を心がけましょう。

心電図検査
  • 検査の目的

    心電図検査の目的は、心臓の動きを電気的な波形に表して記録し、それによって心臓の状況を把握することです。特に、心臓の活動の異常によって現れる不整脈の診断には不可欠の検査です。心電図検査で最も一般的なのは安静時の心電図検査で、私たちの体の手足や胸部に電極を付け、心臓の活動によって発生する電位差をキャッチする仕組みです。心肥大や先天性弁膜症などの形態的な異常は95%以上の確率で発見できますが、不整脈の遠因となるさまざまな疾患の診断の決め手にはなりません。仮に心電図検査で異常なしと診断されたからといって、心臓が正常だと勝手に判断するのは要注意です。

  • 基準値

    心電図検査の基準となるのは、多くの健康人の心電図データをもとにパターン化された波形です。現在では、その基準と検査で得られたデータを照合する、コンピュータによる自動診断が行われています。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    健康人でもときに不整脈は起こりますので、不整脈と診断されても驚くことはありません。ただ、不整脈には心肥大や心不全、弁膜症、心筋症、狭心症、腎疾患、血液中の電解質異常、投薬による副作用などさまざまな危険因子が考えられます。そこで検査結果を手がかりにエコー検査や採血、狭心症の検査などを行い、それらの危険因子を探ります。

  • 受診時または検査時の注意点

    不整脈自体は現象です。むしろ、その原因が危険なものかどうかの見極めが重要です。過去に気を失ったことや動悸、目まい、息切れなどがなかったか、普段の自覚症状を正確に医師に伝えるようにしてください。

血圧測定
  • 検査の目的

    血圧測定は、主に脳卒中や心臓病など、動脈と心臓に関する疾患が発症する危険度を評価するために行います。これまでの統計調査によって血圧が高い人ほど脳卒中や心臓病が発症する危険度が高いことが実証されていますので、定期的にくり返し血圧測定を受けることで、自分自身の平均的血圧を知ることが大切です。最近では小型で性能のよい血圧計も市販されていますので、家庭での血圧をこまめに測ることも、ぜひおすすめしたいです。

  • 基準値

    血圧測定の基準値は、診察室血圧130/80㎜/Hg未満、家庭血圧125/75㎜Hg未満とされています(75歳未満)。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    基準値より高い場合は脳、心臓、腎臓などの臓器疾患のほか、糖尿病や高脂血症などが考えられます。症状に応じて降圧剤を処方しますが、高血圧の危険因子を特定するために心電図や尿検査などを行うほか、喫煙や運動不足などの生活習慣の是正をも視野に入れた治療活動を行います。

  • 受診時または検査時の注意点

    受診の緊張から血圧が一時的に高くなる“白衣高血圧”に象徴されるように、状況によって血圧は変動します。コーヒーや煙草などの刺激物を避け、受診前の五分間は安静にすることを心がけてください。

胸部X線検査
  • 検査の目的

    胸部にある臓器(主に肺・心臓・大動脈など)、つまり呼吸器と循環器に異常がないかを調べる検査です。胸部全体にX線を照射して平面撮影し、肺に異常な影があるかどうか、心臓の形に異常があるかどうかを調べます。
    X線撮影では、フィルムはネガの状態になります。例えば、肺は空気が多いためX線を通しやすく全体に明るく(=黒く)映ります。この肺の中に白く(暗く)映る影が認められれば、何らかの異常があると考えられます。また、心臓の形や大きさの異常も写真から推測できます。
    検査で異常が見られた場合には、CT(断層撮影)検査が行われます。

  • 基準値

    その部位に形や大きさの変化、異常な影がなければ問題ありません。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    肺結核や肺炎などの炎症、肺がん、肺膿傷、肺気腫などの疾患や、気管支拡張症、心臓肥大など。ただ、検査の際には十分に息を吸って止めた状態で撮影していないと、横隔膜が上がり心臓肥大気味に見えたりすることもあります。

  • 受診時または検査時の注意点

    簡単にできる検査なので、年1回は受診を。検査時には金属製のものをはずし、技師の指示にしたがって、大きく息を吸い込んでしっかり止めることが大切です。なお、人体にはほとんど影響のない程度ですが、微量の放射線を浴びるため、妊娠中または可能性のある人は申し出てください。

胃部X線検査
  • 検査の目的

    食道、胃、十二指腸までの疾患の有無を調べます。胃がんの早期発見などに効果的な方法です。バリウムを飲んで充満像、二重造影法、圧迫法などの方法でX線撮影し、臓器の形の変化や異常について診断します。異常が認められた場合には、さらに内視鏡検査を行い、同時に粘膜の一部を採取する生検を行う場合もあります。

  • 基準値

    臓器の形に変化や異常が認められなければ問題ありません。

  • 異常値の場合に考えられる主な疾患

    食道ではポリープ、潰瘍、腫瘍、狭窄、変型、憩室、ヘルニアなど。胃では胃炎、潰瘍、ポリープ、腫瘍、がんなど、十二指腸では潰瘍、ポリープ、変型、憩室、狭窄などが考えられます。がんなどの病気以外にも、食道拡張症、胃下垂症などの機能的な病気もこの検査で診断することができます。

  • 受診時または検査時の注意点

    受診当日は絶食で、水分をとるのも不可。前日の夕食も軽めにし、消化のいいものを早めに食べて、9時以降は飲食しないこと。また煙草も検査当日は禁止、車の運転も避けてください。衣服はボタン、金属製のものがなく身体を締めつけないものを。検査時は技師の指示にしたがい、リラックスして検査を受けましょう。
    また、微量の放射線を当てるため妊娠している人、もしくは可能性のある人は受けられません。さらに普段から便秘の強い人は、検査後にバリウムが腸の中でかたまり、排便に苦労することがありますので、主治医に相談してください。

遺伝子関連検査
  • 検査の種類

    遺伝子関連検査は、以下の3種類に分類されます。なお、遺伝子関連検査で用いる試料は、様々な検体(血液、血清、咽頭ぬぐい液、がん細胞など)から抽出した核酸(DNAやRNA)で、PCRなどを用いて核酸(遺伝子)の有無や変化を検査します。
    1) 病原体核酸検査
    ヒトに感染症を引き起こす外来性の病原体(ウイルス、細菌等、微生物)の核酸(DNAあるいはRNA)を検出・解析する検査です。新型コロナウイルス(SARS-C0V-2)感染症の診断のためのコロナウイルスのPCR検査などが代表的な例になります。
    2)ヒト体細胞遺伝子検査
    がん細胞特有の遺伝子の構造異常等を検出する遺伝子の解析および遺伝子発現解析等、疾患病変部・組織に限局し、病状とともに変化しうる一時的な遺伝子情報を明らかにする検査です。がんのゲノム医療として広く利活用されるようになったがん遺伝子パネル検査では、がん細胞の遺伝子の変化を見つけて抗がん剤の適用を決めることができます。
    3)ヒト遺伝学的検査
    単一遺伝子疾患の診断、多因子疾患のリスク評価、個人識別に関わる遺伝学的検査などを目的とした、核およびミトコンドリアゲノム内のその個体が生来的に保有する遺伝学的情報(生殖細胞系列の遺伝子解析より明らかにされる情報)を明らかにする検査です。遺伝情報には様々な特性があり、多因子疾患のリスク評価(環境因子や遺伝因子などの複数の要因が重なり発症する疾患)では、医学・医療の進歩とともに臨床的有用性が変わりうることなどがあげられています。